背筋に怖気が走る。
首の後ろがチリチリとする。
両の肩に寒気を感じる。
喉の奥に得体の知れない違和感を感じる。
乾いた唾液を無理矢理に飲み込もうとする。
だが、上手く飲めない。
喉の違和感が俺の嚥下機能を阻害する。
膀胱が収縮し、尿意を感じる。
やばい!
見ちゃダメだ!
早くここから退け!
脳が体に指示を出す。
だが、まるで脊髄がその電気信号を無視するかのように、
俺は視線を反らせない。
俺の足は動かない。
俺は、自分の体に向かって、必死の抵抗を試みる。
まるで数十キロの荷物を持ち上げるような意思と筋力を費やして、
俺は、一度だけ、瞬きをした。
僅か0.1秒間。俺の視界が瞼の裏側にある闇に染まる。
…直後。
黒いナニカは、
石碑の横から、消えていた。
鉛が外れたかのように、体が軽くなる。
全身を襲っていた寒気も、消えた。
ゴクリ…。
唾も飲み込める。味も感じる。
俺は周囲を見渡す。
国道14号線を走る自動車の黄橙色のライトが眼に入る。
胃と肺に溜め込んだ濁りを吐き出すかのように、大きく、わざとらしく、深呼吸をして、
俺は、禁足地『八幡の藪知らず』を、後にした。
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勘違いだったらすいません。 「気のせいか。」が「木にせいか。」になってます。
「直しましたm(_ _)m」