笹の葉のざわめく音が周囲の車の音をかき消した。
時々、か細い虫の音がチキチキと聞こえる。
光を通さない程に竹が群生しているが、光の透け方から察するに、森の中央には隙間があるようだったが、ここからでははっきりと見えない。
…なんだ、こんなものか。
幽霊に出会えるとか、何かしらの恐怖の体験をするとか、そんな出来事を期待していたわけではなかったが、俺は少し残念な気分になる。
そんな俺の中に、むくむくと好奇心が膨らみ始めた。
せっかくここまで来たんだ。
…ここは足を踏み入れてはならない禁足地。その伝承。
…そして俺の好奇心。怖いもの見たさ。
それを天秤に掛けた結果。
一歩だけ。
そう、一歩だけ、俺は禁足地『八幡の藪知らず』の竹藪に、足を踏み入れた。
その時。
俺は視線を感じた。
強い視線だった。
鋭い刃で串刺しにされる。貫かれる。そんな形容が合う感覚。
社殿を振り返る俺。
…何もない。
しばらくの間、…おそらく数秒間の事であろうが、俺は視線を感じた方向…社殿を凝視する。
…。
え?
石碑の隣で、何かが動いた。
黒い影がユラリと蠢いた。
そして、
黒い影が
姿を現す。
それは、
人の形をしていた。
人の形をした、黒いナニカ、だった。
…なんだあれは?
この話は怖かったですか?
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勘違いだったらすいません。 「気のせいか。」が「木にせいか。」になってます。
「直しましたm(_ _)m」