通話口からは無機質なツーツー音しか聞こえません。
けれども先輩はそれを意に介することもなく、電話口で会話を続けます。
一体、先輩は、誰と会話していたのでしょうか?
後輩の彼は言います。「あの先輩、普通じゃねえよ。気持ち悪いよ」
…
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会社が休日のある日。
クリスマス前日。
後輩の彼は、街のデパートで、先輩の姿を目撃しました。
先輩は、一人でした。
一人で、玩具販売のコーナーを歩いていました。
その時、先輩は小さく独り言を喋っていました。
いえ、よく見ればそれは、独り言ではありませんでした。
先輩は、右手を斜め下に差し出し、何かを掴んでいるような格好をしていました。
そして、時々、右手を差し出している斜め下に向かって、小さく何かをつぶやいていました。
まるで、見えない誰かに語りかけているかのように…。
後輩の彼は、言いました。
「あんな気持ち悪い奴と一緒に働きたくない…」と。
…
…
…
それからも、先輩の奇行は続きます。
さも家族思いの人のように、
家族の写っていない写真を人に見せ、
誰にも繋がっていない携帯電話と会話をしています。
私にも、その先輩の姿しか映っていない家族写真を見せてくれたことがありました。
ですが、先ほども言った通り、多少の奇行はあっても仕事での先輩は優秀です。
私達の他にも、先輩の奇行について知ってる同僚はいるのでしょうが、その件について触れる人はいませんでした。
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