私が呆れていると、現場責任者が口を開いた。
「我々は毎日休まずに働いてきましたが、もう限界です。
この事業は初めから無謀だったことが、まだ分かりませんか。
私も本日限りで辞めさせていただきます。失礼します」
現場の要がいなくなったことで、ようやく社長も事の重大さに気がついたらしい。
今さらになって、どうにかならないか、どうすればいいと私に泣きついてくる。
「そもそもこの土地は呪われているので、どうにもなりません」と伝えると、「そんなのは迷信だ。もっとも、破格の値でここが手に入ったのはそのおかげだが」と言うではないか。
社長はこの土地が穢れていることを知っていた。
それでいて今まで隠していたのだ。
「既に犠牲者も出ています」と知らせても「建設に犠牲はつきものだ。仕方がない」と聞く耳を持たない。
所詮、我々はコマでしかないのだろう。
散々働かせて必要がなくなれば捨てられるのだ。
きっと土地がどうであろうと結果は変わらない。
私は、その日を最後に現場を離れた。
建物の完成を見届けられないのは残念だったが、完成することがないのも分かっていたから。
その後、バブルの崩壊とあわせて会社が倒産したと風の噂で聞いたよ。
あれから30年が経った。
最近になって、あの現場がよく夢に出てくるようになったんだ。
なぜ今になって現場の夢を見るのかは分からない。
ただ、頻繁に見るものだから気になって行ってみることにしたんだよ。
驚いたことに、現場はほとんど変わっていなかった。
雑草が生い茂って荒れてはいたが、造りかけの土台もそのままだった。
私は懐かしくなって、しばらくその場に佇んでいたと思う。
その時、ふと何かが視界に入り込んだ。
そこには、確かに失踪した二人がいたんだ。
まさか。
私は思わず駆け寄った。
すると、二人の姿はたちまち蜃気楼のように消えてなくなった。
あまりの懐かしさに記憶が創り出した幻覚だったのだろうか。

























今日いちばんよかった
映像化してほしい
引き込まれました。
引き込まれました
よかった。怪異の実態は直接そこに現れる事も無く、けど情景はしっかり目に浮かんで怖かった。
地味に怖い
その婆さん何者だよ
強すぎじゃね?
やっぱり怪異はこのくらいの書き方の方が映えるね
超常現象かどうか微妙なラインでとどめておくのがベスト
老婆がどんな呪いをかけたのかを明確には言わないのも良かった
そこで神主が人形を使ったどうたらこうたらの呪いですと説明してたら正直萎えてた
この作品を正当に判断できる評価者がいることを切に願う。今まで数々の怪談を目にしてきたが、この作品はクオリティが違う。文学作品としての気品すら感じる。
これ読むと他の話が幼稚に見える
箱に入った人形と鏡が、「後遺症ラジオ」の〃おぐしさま〃で再生されてゾッとした
この話は有り得ない
あの時代だったらこの婆さんは呪いをかける前に居なくなっているはずだから
言い方変だけど、よく出来てるなぁと思った
だからタイトルの「向かい合わせの怪異」というのにも意味があると思うんだけど、考えてもわからない。何が向かい合わせなのかわかる人いる?
もう小説家デビューしていいクオリティ。
引き込まれた。
読み応えありました。
過去似たような怪談を目にしましたが、クオリティの高さではトップクラスですね。
難をいえば、タイトルで損をしていると思います。
私の想像力が不足していることもありますが、どなたかも指摘していたとおり、「向かい合せの怪異」とした理由と根拠がいまいちわかりにくい点でしょうか。
本文を読み進むうちに、なんというタイトルだったかすら忘れてしまうほど優れたストーリ展開なので、単純にもったいないなぁと思った次第です。
サトウと友人の幻覚怖っ
あもすっごぃ。
今まで見た中で1番文章力が高い。プロの小説家かと思いました。
恐怖は快感だが、ビックリするのは不快。
文章ホラーのいい所は映像ホラーみたいにデカい音と視覚効果でビックリさせて満足する駄作が無い所だな
いい作品でした。