神主は、これで分かったろうという顔をした。
自分が身をもって経験したからこそ、この資料の内容が現実に起こったことだと受け入れられるが、着工前であったとしたら信じてはいないだろう。
しばらくして、神主は「あなたがすべきことは一つしかないと思うが」と言った。
云わんとすることは明白だ。
あとは聞き入れられるかどうかだけ。
私は深々とお辞儀をすると、その場を後にして車に乗り込んだ。
現場に戻る間、建設を中止させる理由ばかり考えていた。
社長は間違いなく反対するだろう。
先ほどの史実で例えるなら、おおかた社長は政府といったところだろうか。
私は首を切られるに違いない。
それでもいいさ。
いずれにせよ、残された人数であの建物を完成させるのは不可能なのだから。
気がつくと、既に車は現場の敷地に入っていた。
現場の皆は片付け作業に取り掛かっている。
私が車を降りて管理室へ向かっていると、後ろから呼び止められた。
見れば20名ほどの作業員が集まっているではないか。
一体どうしたんだと言うと、「今日限りで辞めせていただきます」と先頭にいた一人が告げた。
くるべき時がきたと感じたね。
私は「わかった。今までよく頑張ってくれた」と伝えると、あっさりと認められたことが予想外だったのか、皆は驚いた顔をしていたよ。
少しあって、事務員から日当を受け取った皆は「お世話になりました」と軽く頭を下げて去って行った。
もうお終いだ。
人員は足りていないし、集めることも出来ない。
私が管理室へ入ると、運がよいのかそこには社長と現場責任者の姿がある。
社長は私を見るなり「貴様らは何をやっているんだ。全然進んでいないじゃないか」と激高した。
あぁ、この人は何も分かってくれはしないんだと落胆したね。
崩壊の足音はすぐそこまで迫っているというのに。
利益を独占したい社長の判断が招いた結果なのだ。
他社と協力して取り組む提案を蹴ったのも社長自身だ。
「これ以上、作業を進めるのは不可能です。たった今20人ほどの作業員が辞めて行きました」
これを聞いた社長は顔を真っ赤にして「今すぐ呼び戻せ」と怒鳴るばかり。






















今日いちばんよかった
映像化してほしい
引き込まれました。
引き込まれました
よかった。怪異の実態は直接そこに現れる事も無く、けど情景はしっかり目に浮かんで怖かった。
地味に怖い
その婆さん何者だよ
強すぎじゃね?
やっぱり怪異はこのくらいの書き方の方が映えるね
超常現象かどうか微妙なラインでとどめておくのがベスト
老婆がどんな呪いをかけたのかを明確には言わないのも良かった
そこで神主が人形を使ったどうたらこうたらの呪いですと説明してたら正直萎えてた
この作品を正当に判断できる評価者がいることを切に願う。今まで数々の怪談を目にしてきたが、この作品はクオリティが違う。文学作品としての気品すら感じる。
これ読むと他の話が幼稚に見える
箱に入った人形と鏡が、「後遺症ラジオ」の〃おぐしさま〃で再生されてゾッとした
この話は有り得ない
あの時代だったらこの婆さんは呪いをかける前に居なくなっているはずだから
言い方変だけど、よく出来てるなぁと思った
だからタイトルの「向かい合わせの怪異」というのにも意味があると思うんだけど、考えてもわからない。何が向かい合わせなのかわかる人いる?
もう小説家デビューしていいクオリティ。
引き込まれた。
読み応えありました。
過去似たような怪談を目にしましたが、クオリティの高さではトップクラスですね。
難をいえば、タイトルで損をしていると思います。
私の想像力が不足していることもありますが、どなたかも指摘していたとおり、「向かい合せの怪異」とした理由と根拠がいまいちわかりにくい点でしょうか。
本文を読み進むうちに、なんというタイトルだったかすら忘れてしまうほど優れたストーリ展開なので、単純にもったいないなぁと思った次第です。
サトウと友人の幻覚怖っ
あもすっごぃ。
今まで見た中で1番文章力が高い。プロの小説家かと思いました。
恐怖は快感だが、ビックリするのは不快。
文章ホラーのいい所は映像ホラーみたいにデカい音と視覚効果でビックリさせて満足する駄作が無い所だな
いい作品でした。