夢の中で俺は「葉介」という名で呼ばれており、「美咲」という女性といつも一緒にいる。
葉介と美咲は、どうやら恋人関係にあるらしかった。
夢の中の俺は、葉介の体を通して、二人の幸福な時間を傍観者のように見守っている。
葉介が喜びを感じれば俺も同じように嬉しいし、葉介がそう考えているのと同じくらいに美咲を幸せにしたいと考えている。
夢は、かつての幸福な日々を追体験させてくれているようで、慰めだった。
だが、夢から覚めた俺を待っているのは……
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「もうすぐ葉介君の誕生日だね」
「あ、そうだね。覚えててくれたんだ」
「4月1日だよね?」
「うん。あと2週間くらいかな」
「何が欲しい?」
「え?プレゼントくれるの?」
「当たり前じゃない」
「ええ、嬉しいな。美咲さんが選んでくれるなら何でも嬉しいけど……」
「この前買い物行ったとき、時計見てたじゃん。あれにしようか?」
「え!いや悪いよ。あれすごく高いから」
「大丈夫大丈夫」
「いや悪いって。もっと安物でいいんだから」
「いいの、私があげたいんだから」
「それじゃあ、今日は美咲さんのやりたいことたくさんしよう!今日も、時間大丈夫なんだよね?」
「うん大丈夫!それじゃあねえ……」
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またあの夢だ。
最近、自分と葉介の境界が曖昧になっているように感じる。
葉介の行動や口から出る言葉が、自分の思考と全て一致する。
夢の中で美咲に触れる指が葉介のものなのか、自分のものなのか、わからなくなってきた。
……幸せだった。
叶うのなら、ずっと夢の中にいたい。そう思う事さえあった。
そしてその度に俺は、目の前で眠る雪乃に対して、焼けつくような罪の意識を覚えた。
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