ベッドに潜り、ぼーっと考える。
この部屋に誰かが入ってきている。確実に。
しかし誰が、何のために?
どうして私なの?
どうやって入ってきているの?
考えているうちに、深い眠りについてしまった。
深夜、聞き慣れない物音で目を覚ます。
酷い頭痛で起き上がれない恵子は、眼球だけを動かして部屋を見回した。
「なんていうんでしょう。ギッ、ギッ、ギッみたいな。人が床の上を歩くような規則的な音でした」
風の音だろうか?いや、違う。
「私が住んでた部屋って、寝室と居間の間が曇りガラスの引き戸だったんですけど」
そのガラスの向こうに、人影が見えた。
それは何かを探しているようだった。
「なぜか私、本能的に思ったんですよ。ここで音を出したらまずい。私の存在を知られたらヤバいって。普通だったら強盗かな、警察呼ばなきゃとか考えると思うんですけど、体調が悪いのもあってマトモな思考が奪われてたんでしょうね」
恵子は目を瞑り、寝たふりをすることにした。そうすれば人影が外に出ていく。そう思った。
どれくらいの時間そうしていたかわからないが、やがて足音がしなくなった。
「それで、やっと目を開けたら」
恵子の顔を、見知らぬ女が覗き込んでいた。
見開かれた目には憎悪が滲み、振り乱した髪はびっしょり濡れていた。
「……!!!!」
悲鳴を上げようとしたが声が出ない。
そして何故か身体も動かせない。
恵子の脳裏に“金縛り”という単語が浮かんだ。
「本当にびっくりしました。意識ははっきりしてるのに、身体がぴくりとも動かせないんですよ。声も、自分では出してるつもりだけど実際は唸り声にしかならなくて」
女はゆっくりと恵子から離れると、ガラス戸の手前でぼうっと消えてしまった。
と同時に、恵子の金縛りは解けた。
「頭痛くてしんどかったけど起き上がりましたよ。寝てるほうが怖いですからね。もう全身汗びっしょりで、あり得ないくらい心臓がバクバクいってました」
あの女は何者だったのか。
もしかしたら、体調を崩していたのとここ最近の不安があんな夢を見せたのではないか。
恵子はそう思おうとしたが、水を飲もうとガラス戸を開けたところで思わず硬直してしまった。

























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