「床が、すごい濡れてたんです。雨が吹き込んだみたいなすごい濡れ方。でも雨なんて降ってないし、吹き込むような窓もないんですけど」
恵子は玄関のドアに、見覚えのない傘が立て掛けてあるのを見つけた。
その傘を見た瞬間、思い出した。
「あの女、私、知ってたんです。コールセンターでバイトしてた頃に後をつけてきた女でした。あの女が顔を隠すために使っていた傘が、なぜかここにあったんです」
その後、恵子は会社を辞めて実家に戻った。
あのまま一人暮らしを続けていく自信が無かった。一人になったらまた、あの女が訪ねてきそうで……。
「今は実家近くの工場で働いてます。派遣なので給料は安いですけど、帰りも送迎のバスがあって安心なので。
あれからあの女は見てませんよ。結局なんだったのか、なんで私がターゲットにされたのか、わからないままです」
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