ツクモの怪談集【刀】
投稿者:四川獅門 (33)
長編
2021/03/20
15:18
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豊田さんが務める会社に、新人が入った。
明るく、爽やかな好青年だった。
仕事の覚えもルックスも良かったため、すぐに評判になった。
昼休み、社員達はオフィスのコーヒーサーバーを利用した。
新人の彼は、自前のマグカップを持っていなかった。
「上の棚に使ってないマグカップ入ってるから、今日はそれを使っていいよ」
部長が言った。
「ありがとうございます」
新人は普段開けられることの無い備え付けの棚からマグカップを取り出し、コーヒーを楽しんだ。
豊田さんは彼の使ったマグカップを見て、ある事を思い出した。
数年前、部長のパワハラでノイローゼになった社員がいた。彼は帰宅中、電車に飛び込んだ。
遺書は無かった。
新人が使っているのは、自殺した元同僚のマグカップだった。
豊田さんは何も言えず、彼が美味しそうにコーヒーを飲むのを見ていた。
その日の帰り、新人は電車に飛び込んだ。
好青年の唐突な死に、社員達は首を傾げたが、豊田さんには何となく「死因」が分かったそうだ。
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人形の話最後めっちゃゾクってした・〈=〉・