ある夜、松村さんはリビングから聞こえる音で目を覚した。
ﾌｯ……ｽｯｽｯ……ﾌｯ……ｽｯｽｯ……
その時ははっきりと聞こえた。
恐る恐る音の方へ向かうと、真っ暗なリビングに黒い人影がある。
ﾌｯ……ｽｯｽｯ……ﾌｯ……ｽｯｽｯ……
黒い布で体を被ったような人影が啜り泣いていた。
人影は松村さんの方へ振り返ると闇に溶けた。
「部屋は真っ暗で、顔は見えませんでした。でも、確かに女の人がすすり泣いていたんです。」
後日、アンティーク好きの友人を家に招くと、友人は花瓶を見て驚愕した。
それは、花瓶では無かった。
イランで生まれたその瓶は、戦争に行った夫や息子の帰りを待つ女が、涙を溜めるための器
「涙壺」
という物だった。
松村さんは今でも大事にその青いガラスの壺を所有している。
その壺に涙を流すと、不思議と心が癒えるそうだ。
死【マグカップ】
2012年 東京都
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人形の話最後めっちゃゾクってした・〈＝〉・