お婆さんにいろいろ聞く前に、ボクはお婆さんに、マリーさんという方は既に亡くなっていることを告げた。
「そうかい」と言ったまま、しばらく沈黙がつづいた。
やっと口を開いたお婆さんから、マリーさんの昔の話を聞くことができた。簡潔にまとめるとこんな感じだ。
マリーさんの本名は『浜辺マリ』。
お婆さんは『平原リリ』といい、若いころは歌手をやっていたそうで「リリー&マリー」として盛り場でギター片手に歌っていたこともあるらしい。
元々マリーさんと言う名前はボクが半分冗談のようにして付けた名前だったのに、実は当たっていたという偶然に驚かされた。
「そうか、だから昨日ギターの音が聞こえたのかな・・・」そうつぶやくと平原さんは、
「なんだい? マリーのギターがまだここにあるのかい?」と尋ねてきた。
ボクは昨晩の出来事を話し、ギターはどこにも見当たらないと告げた。
「マリー、まだここにいるのかい?・・・なんだ水臭いねぇ。こんな男の前に現れるんならアタシの前にも出てきておくれよ!!」
そう言って天井の方を見上げる。空の上にいるマリーさんに語っているのだろうかと思ったが、実はそうではなかった。
「あんた、ギターがどこにあるかわからないって言ったね」
平原さんはまるでボクよりもこの家の事を知ってるかのように言い放ち、
「こっちおいで」と立ち上がり、二階へ行くと言い出した。
一段一段ゆっくりと階段を登る平原さん。その後をゆっくりついていくボク。
なかなか1歩が進まない。お婆さんには階段の1歩もこたえるようだ。
やっと二階にあがると、廊下を渡り、二階の一番奥まで来た。
「いつもここでマリーさんの気配が消えるんです」
そういうボクを尻目に、窓のサンのあたりから1本の棒を引っ張り出した平原さん。
棒の先端にはフックが付いており、それを天井に突き刺した。
いや、そこには四角い枠があり、そのカギ穴のような場所にフックを差し込んでガチャリと下に引き下ろした。
「あっ」と驚いた。
天井の枠はハッチのように開き、そこから梯子が出てきたのだ。
「ほら、ここから屋根裏部屋に行けるんだよ。アタシはもうハシゴは登れないから、あんた一人で行って見ておいで」
なんということだ、屋根裏部屋があったなんて、今初めて知った。
梯子を登ると、そこには小窓のある小さな部屋があった。
折り畳みの簡易な椅子とテーブルがあり、壁にしつらえられた本棚にはいくつかの小説やレコード、カセットテープなどがあり、その下にギターが立てかけられていた。
ギターは弦が切れており、少しガタも来ているようだった。
ボクはそのギターを持って下に降りた。
kanaです。
この作品は2022年の春頃に書いたマリーさんシリーズの4編をまとめて、加筆修正してまとめた完全版として書き上げたものです。長編18ページとなりましたが、面白く読めると思いますので、ぜひお読みください。後半に出てくるニンニンこと、除霊師・忍足 忍(オシダリ シノブ)は、朽屋瑠子シリーズの「赤騎士事件」にも朽屋の同僚として登場する除霊師です。スピンオフ参加です。お楽しみください。
読んでいる途中で感情移入をしたようで、涙が止まりませんでした。
良い話や
すごい感動しました👏
最高です!
※勲章授与のシーンで脱字がありましたので修正しました。
kanaです。
劇中歌として『ホームにて』と『時はながれて』をマリーさんが歌っていますので、
よろしければそれを聞きながら読んでいただくと、臨場感も湧くと思います。
ちなみに、検索をかけると『時はながれて』と同名のタイトルの楽曲を複数の方が歌われているようで、もしかしたら違う曲を聴く可能性もありますが(笑)、マリーさんが歌っているのはあくまでも「某有名女性フォークシンガー」が歌われている曲です。失恋の歌が多い方ですよね。
では、お楽しみください。
↑↑感動したというコメントをいただいて大変ありがたいです。あと、怖くないのにこわいねボタン押してくださる方、ありがとうございます。
みなさんはどのシーンでほろりと来ましたか?
怖いの苦手な方も、ぜひお楽しみください。
さすがです。
本を買ってみたい