「こっち側においで、そして私と話そうね」
その時初めてお婆さんに恐怖を覚え、逃げようとしても腰が抜けて立ち上がれませんでした。
もうダメだと諦めた瞬間に
「チョコちゃん!」
その声と共に体が引っ張られ歩道に移り、
横を見ると女性が息を吐きながら私の腕を引いていて、私の体を触って怪我がないのを確認した後間に合って良かったと抱きしめられました。それを皮切りに私は涙が止まらずワンワン泣き続け、落ち着いたあと、女性の家に行って
母親の車で念の為、病院に行くことになりました(病院は遠い為車の方が早い)。
車の中でどうしてあそこで転んでいたのか聞かれ、道中での話をした所、女性と女性の母親が驚いた顔で私を見て女性が急にケータイを開いて何か操作をしたあと
「このお婆さんでまちがいない?」
と聞かれ覗いて同意すると暫く目を泳がせた後
「変な事聞いてごめんね、チョコちゃんって幽霊とかそういうの見える人かな?」
とおずおずと聞かれました。
もちろんその時は幽霊が見える事など自覚していないので首を横に降ると女性はそっかごめんねと謝られてその話は終わりました。
怪我は掌をスっただけで大したことはありませんでした。
その帰りの車で女性の母親からあのお婆さんの話が出てきました。なんでもあのお婆さんは女性が1歳の頃に病気で亡くなっておりあの家には女性と母親の二人暮しなのだそうです。
その話を聞いた私は家でお婆さんと何回も話した事を伝えると顔を見合せたあと私の方を向き酷く悩ましげな顔でこう言われました。
お婆さんは酷く偏屈な性格だったらしく友人も居らず、旦那さんとも離婚する原因になったのだそうです。その為か酷く寂しがり屋で死ぬ前も死にたくない、死にたくない、お前達と離れるのは寂しいと言って亡くなったのだそうです。
「多分亡くなったあとも寂しくて仕方がなかったお婆ちゃんがチョコちゃんと会って話せた事が嬉しくなって連れていこうとしたんだろうね。」
と言われ家まで送ってくれました。
玄関では私の母が心配そうに出迎えてくれて、珍しく他の兄弟からも大丈夫かと言われて囲まれていました。その後ろで、何故か女性はもう終わったはずの話である私が幽霊が見えるかどうかという質問を母にしていました。
その質問に母は思い出したかのように
「あぁ、うちの家系は皆見えるんですよ。ただ普通の人と見分けがつかなくて困りものですけど」
2人に言っていました。その話を聞いた私は何でもっと早く言ってくれなかったのかと怒ったらそれで今回の轢かれかけた原因をなんとなく察したようで私に
「ごめんねチョコ、見える事が当たり前で伝えんでも自覚してると思ってた。本当にごめん」
と謝られました。
その後女性の母親にお婆さんの写真を見せてもらった母は驚いた顔で見ていました。
どうやら母も週3の頻度でそのお婆さんを仕事帰りに見ていて挨拶もしていたそうです。
そしてその他の兄弟も皆お婆さんを見ていたそうですがあまり興味がなく挨拶されても無視するか適当にしてたそうです。全員お婆さんが亡くなって居ることを知らなかったそうが。
何故、お婆さんは私をあの世に連れていこうとしたのかは分かりません。
それとこの一件で女性の母親は2階に置いていたお婆さんの遺骨をお寺に納めに行ったそうですがそこでお婆さんがなぜが居なくなる時2階に言っていたのが分かりました。
こわいて