あの時は同様してしまったが、少し時間が空いて頭は冷静になりつつあった。
考えてみれば常に手に鎖なんて巻いてる変人のいう事だ。
真に受ける俺も馬鹿らしい。
バスが到着するとSuicaをタッチして座席につく。
今日さんざん話題に出た例の座席、ではなく後ろの方の少し視点が高くなる席に。
なんだかんだ頭の中で結論を描きつつ、また心のどこかでは鎖の言うことを信じてしまっている自分が居る。
なんだか気味が悪く感じて今日は違う席に座った。
この問題とどう向き合うかは、明日の朝の俺に託そう。
続々と車内乗り込んでくるサラリーマンや主婦、学生を尻目に俺は頬ずえをついて窓の外を眺めた。
いい眺めだ。
たまには後ろの方に座ってみるのも悪くない。
バスが発車してしばらく経つと程よく背もたれにかかるGと適度な揺れが起因してか、睡魔がやってきた、そういえば今日は休み時間に昼寝しなかったなと微睡みの中で妙な納得をしつつ眠りに落ちたのだった。
夕暮れの廊下、俺はと言うとその日は部活も無く暇なので校舎をぶらついている。
外では陸上部が掛け声を発しながら走り込みに勤しんでいる。
集団の先頭を走っているのは男子から人気のある女子陸上部のエースだ。
あーそういえばあんな子いたなと、どこか懐かしいような、また寂しいような、夕暮れ色に染まったノスタルジックに思いを馳せる。
そういえばどこへ向かっていたんだっけ。
誰かに会いに行こうと思っていたはずだ。
目の前の廊下の突き当りにあるスライドドアの上のネームプレートには図書室と書かれている。
あーそうか、あの子に会いに行こうと思ってたんだった。
俺は歩みを進める。
後ろからそこを開けてはだめと誰かに言われた気がした。
俺は構わず扉を開ける。
図書室に入るとその子はいつものように決まった席に座って点字で書かれた本を指でなぞっていた。
俺が声を投げるとこちらに反応する。
音を頼りにこちらを見るのその目の中は。
何も無い。
黒い渦だった。
すごく不気味な。






















えっ、最後びっくりした
「床に落ちた何か」てなんだったの?