「なんで……俺にだけ見えないんだ?」
俺にだけ見えない、なんてまるで何者かに俺だけが選ばれたかのようだ。
こういう展開は本来喜ぶべきパターンが多いのだが、これに関しては微塵も嬉しい気持ちにはなれなかったのだった。
「そうね……なにかきっかけが必要なのかしらね……あなたに気づいて貰うための」
そこまで言うと、鎖はベンチから立ち上がってベンチと触れていた部分のスカートをパンパンと後ろ手に叩いた。
俺を横目で見下ろしてくる。
肩まで伸びた黒いミディアムヘアがそよ風にサラサラと揺れている。
俺を見下ろすその目はやはり冷たいのだが、下から見上げている俺はというと「あー、変な奴だけどやっぱり美人だな」と少しズレた事を考えていた。
「まぁ、そのトリガーを引いたなら……あなたは死ぬでしょうね」
「え……」
吐き捨てるように告げる。
ちょうどそのタイミングで予鈴が鳴った。
鎖は俺の次の言葉を待たずして校舎へそそくさと戻って行った。
俺はベンチに腰を下ろしたまま、ただただポカーンとしていた、その後5限目の体育に遅刻したのは、言うまでもない。
駅前のバス停。
いつものようにキヨスクで買ったツナマヨおにぎりを齧りながら沈みかけた夕日に思いを馳せる。
昼間のあの鎖の発言が頭の中で木霊しているからに相違ない。
『そのトリガーを引いたなら、あなたは死ぬでしょうね』
たかがバスに乗って通学してるだけで?
どうして日本の公共交通機関でそんな物騒な言葉に囚われなければならないのだろうか。























えっ、最後びっくりした
「床に落ちた何か」てなんだったの?