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ヒトコワ

たちさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

もう1人の妻
短編 2024/12/24 00:04 104view

妻は昔から長風呂で、お風呂の時間が短い私にとっては不思議でした。
まず子供とお風呂に入り、その後就寝前にもう一度お風呂に入るというルーティーンが結婚後ずっと続いています。
ある時、妻が2度目の入浴中に私がスマホを洗面所に忘れたので取りに行った際、浴室で動画を観てるような音がしたので「スマホをいじってるから毎日長風呂なのか」と思った時がありました。その後も特に追求もやめるよう注意もしませんでした。
ある晩、子供が熱を上げたので出来る限りの対処をした後に妻に連絡しました。妻は2度目の入浴中だったのでスマホを観てるだろうと思い連絡したのですが返信も無ければ、すぐにお風呂から上がってくるわけでもありませんでした。
しびれを切らした私は洗面所に行き、ドア越しで「おーい、○○が熱上げたよ。」と伝えましたが中から聞こえてくるのはスマホの動画の音だけ。不審に思い、ドアを開けた瞬間背筋が凍る感じがしました。
妻は動画を観てるわけでもなくただ動画を流してるだけで、シャワーも出しっぱなし、鏡に向かって何か呟いていたからです。
スマホの音がうるさくて正確に何を言ってるかは分かりませんでしたが、なんとなく聞き取れた部分をまとめると、私に対する不満や会社の同僚に対する不満などを鏡に向かってブツブツ言い続けていました。
鏡に映る妻の顔は別人のような顔でとても同一人物とは思えませんでした。
あまりの異様な光景に私はドアを閉め、子供のところに戻り様子を見ていると数分後に妻が部屋に来て、「どうしたの?熱上げた?」と言ってきたので、私は連絡したことを伝えると「ごめん。全然気付かなかったー」と言っていました。本能的に、私が妻を浴室に呼びに行ったことは言わない方がいいような気がして言えませんでした。見てはいけないものを見てしまい、これからの生活に影響が出るのを恐れたのかもしれません。

今までの結婚生活で妻と口論になり、妻が先に就寝し、時間をズラして私が就寝するということが何度かありました。

そんな時、決まって妻は夜中に大きな声で寝言を言います。

ある日、口論となり妻が先に寝ている晩のことです。夜中に何故か目が覚めたのでまた寝ようと目を閉じていると、妻の寝言が聞こえてきました。
「いつも、いつもよー」
「何もしないで!」
「本当、なんなんだよ!」
「何もできないくせにさー」と私に対する不満を大きな声で叫んでいたのを聞いてしまった時があります。
あまりにもハッキリと言っているので寝言ではなく、私に対する不満をぶちまけているんだと思いました。
妻が私のことをそんな風に思っていたのかというショックと、今までストレスを感じた時に夜中に叫んでいたのかと思うとなんとも言えない感情になりました。
妻にそう思わせてしまったのかという後悔と同時に少し不気味に思ってしまいました。

長い入浴と夜中に叫ぶような寝言。

私はこれらのことを妻に言わずに生活を続けてきました。私の中だけにとどめておけば今まで通りの普通の生活を送れると思っていたからです。
しかし、さらにある出来事があり私の中だけではとどめておくことはできないと感じました。

ある日、私は体調を崩し自宅で休んでいました。妻は仕事に子供は保育園に出かけていました。
布団で横になっていた時に気配を感じ、ふと部屋の入り口の方を見ると妻が立っていました。
「あれ?随分早いな。早退してきてくれたのか。」と私は心の中で思い安心して目を閉じました。一息ついて足下にある部屋の入り口を見るとまだ妻は立ってこちらを見ていました。私はゾッとしました。妻は無表情でこちらを見下ろしていて、「本当に私の妻なのか?」と思うほどでした。一旦、視線を戻し、目を閉じました。
深呼吸を2、3回して目線を部屋の入り口にやるとそこには誰もいませんでした。
「どこかに行ったのか?」と思っていると子供と妻の声が玄関から聞こえてきて私は少し震えていました。

これらの出来事があり、私はお祓いをしてもらおうか考えていました。
家のことでも悪いことが続いていたのでいい機会だと思い妻にも相談していました。
もちろん妻に関することを相談することは内緒にして、あくまで家のことでお祓いとかしてみようかという話をしていました。
ですが、この話をすると妻は頑なに拒んできます。
「なんの相談するの?必要ある?いいよ。しなくて。」

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