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呪い・祟り

きのこさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

呪うもの
長編 2024/12/23 12:49 2,343view
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「家の人間は仕事があるから忙しくてな。世話は全部よその人に任せて、家族はあまり面倒を見ていなかったからな……。それに、ずっと狭い部屋に押し込められたままで、死んだんだ。……恨んでいても、おかしくはないかもな……」

 祖父から聞いた話では、世話をするのが楽な場所だから。という理由で、あの陽の当たらない小さな暗い部屋で、女性は十数年寝たきりの状態で放置されたようだ。

 最後は大量に血を吐いて亡くなったそうだが、まだ医療が発達していない時代だったので、何の病気だったのかも分からない。

 ただ、あんな陽の光も入らない狭い部屋に閉じ込められていたら、健康な人でも病気になりそうな気がする。窓がないので、換気をすることもできないのだ。

 たしかに暗闇の中から視えた手は、とても細かった気がするので、女性なのかも知れない。

 あの悪意を持った暗闇の正体は、小さな支度部屋の中に押し込められたまま死んだ、その女性で間違いないと思った。

 その女性が亡くなってからは、病気になる親族が増え、産まれたばかりの赤ちゃんも亡くなったりした。男は体が弱くなり、親族の中で戦争に召集された人はいないらしい。

 祖父も5人兄弟だったらしいが、祖父以外は皆早くに亡くなったそうだ。

 祖父はかなり運の強い人だったので、生き残っているのだと思うが、もしかしたら亡くなった兄弟たちが、祖父を守っていてくれたのかも知れない。

 そう思うのには理由があり、祖父には、とても大きくて強そうな守護霊が憑いている。はっきりとは視えないが、男性のようだ。その強い守護霊が、ご先祖様の呪いを全て跳ね返してきたのだろう。

 ———私は、祖父の話を聞きながら、自分も幼い頃に何度か死にかけた事を思い出していた。

 崖から落ちたり、2階から鉄の外階段を転がり落ちてコンクリートに叩きつけられたり、車に跳はね飛ばされて轢ひかれた事もある。ただ、毎回奇跡的に、ほぼ無傷だったらしい。

 私が死にかけた時の話を聞いていると、『偶然』という言葉が何度も出てくるが、そんなに都合よく、偶然なんて何度も起きるものだろうか。

 霊感が弱い親族たちは、あの部屋にいるご先祖様のことを知らない。

 私が生きているのは、『偶然』ではなく、強い守護霊か何かが憑いているおかげだ。自分でも気付く程、何度も助けてもらっている。そうでなければ、とっくに死んでいる気がする。

 支度部屋の暗闇にいるご先祖様は、幼い私を殺し損ったのが気に入らなくて、いつも睨んでくるのだろうか。そしてこれからもずっと、私を呪い続けるのだろうか。

 本当は、何代前のご先祖様か分かっているが、それは心の中に留めておいた方が良い気がする。母がいつも言っているように、これは「誰にも言ってはいけない」ことなのだと思う。

『言霊』という言葉がある通り、口に出すと何かが近寄ってくる気がするのは確かだ。

 今は就職して、実家にはしばらく戻っていない。

 それでも、目を瞑つむってあの小さな部屋を思い浮かべると、暗闇の中からこちらを向く細い目が、すぐ近くにある気がして、押さえつけるような威圧感を感じ出す。

 それは、ただの思い過ごしなのか。それとも———

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コメント(2)
  • とっても怖くてびっくりしました

    2024/12/26/08:29
  • コメントありがとうございます!!
    byきのこ

    2025/01/09/11:58

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