事故物件
投稿者:きのこ (12)
と、言ってしまった。
私は言い終わった後になって、
———しまった! と思い同級生の顔を見るが、もう遅い。
———また、何か言われるかも知れない……。
そう思ったが、彼の反応は、私が思っていたものとは、違うものだった。
私の言葉で何かを察したのか、ずっと笑顔だった彼の顔がこわばって、目が泳ぎ始めた。顔はみるみる青白くなって、唇の色が悪くなる。髪の生え際には一気に汗が滲にじんだ。
いくら鈍い私でも、何かがあったのは分かる。
彼は一度肩にグッと力を入れたように見えて、それから、
「後で、外に行って話そう」と小さな声で言った。
そのまま物件の情報について話を続け、昼になったところで、私たちは近くのファミレスへ向かった。
店へ着くと、彼は店員の案内を断って、周りに人がいない隅の席へと歩いて行く。そして、昼休憩までずっとソワソワしていた彼は、席に着くなり切羽詰まった感じで訊いてきた。
「なぁ、もしかして霊感ある? 視える?」
全く霊感のなさそうな彼の口から、そんな言葉が出たことに驚いたが、詳しいことを話す必要はないので、
「まぁ、何回か視えたことはあるよ」
とだけ答えた。
すると彼は、今にも泣き出しそうな顔をして「良かった……」と、一度目を瞑つむり、自分には霊感はない、と前置きしてから話してくれた。
先日、ある若い家族を案内したらしい。
今はマンションに住んでいるが、子供部屋が欲しいので、一軒家を探している、という家族だ。
男の子は幼稚園の年長で、色んな物件を楽しそうに見てまわる。初めて自分の部屋が貰えるのだから、それは嬉しいに違いない。
そして、ある古くて、大きな家に行った時の事だった。
男の子は、1階をはしゃぎながら走り回った後、両親と一緒に2階を見に行った。それは、この家に住むと決まった時に、自分の部屋をどこにするのかを考えるためだ。
しかし、今上がったばかりなのに、男の子は何故かすぐに下りてきてしまった。
他の物件では両親と、もっとじっくり話し合っていたので不思議に思ったが、もしかすると、気に入らなかったのかも知れない。それに、小さな子供なので、もう飽きてしまったのかも知れない、とも思った。
男の子は2階から下りてくると、そのまま小走りで彼に駆け寄る。
「もう見なくていいの?」
と声をかけると、男の子は黙って頷うなずいた。
———ついさっきまでは、あんなに楽しそうにしていたのに……。
急に元気がなくなってしまった男の子に、何があったのかが気になる。
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