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不思議体験

きのこさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

つけたら、いる
短編 2024/12/23 10:37 124view

 H君は高校生だ。
 今時珍しく、携帯も持っていなければゲーム機も自宅に無い。
 そんな彼がはまっているのは、「ラジオ」だった。
 夜遅くまで起きてしていることと言えば、友達とのラインではなく、「ラジオを聞くこと」。学校の先生は「平成生まれなのに、昭和みたいだな」と苦笑するという。

 そんな彼がある日。
 深夜のラジオを布団の中で聴いていた。
 テスト前だったこともあり、仰向けになって寝転がり、教科書を眺めて、ラジオはイヤホンで聴いていたらしい。目的の番組が終了し、さてもうそろそろ寝ようか、と寝転んだまま室内照明のリモコンに手を伸ばした。
 だが、いつもある場所にリモコンが無い。
 H君は溜息をつき、ごろんとうつ伏せに寝返ってリモコンを探そうとして。

 ぎょっとした。

 部屋の隅に、背広を着た太った男が膝を抱えて座っているのだ。

 一瞬、泥棒だと思って、床に手を突いて上半身を起こす。拍子に、近くにあった室内照明のリモコンに手があたり、室内が暗くなる。しまった、と思って部屋の隅を見ると、背広の男がいない。
『……見間違いか?』 
 若干安堵して、Hくんは再度、リモコンを使って照明をつける。

「うわっ! いるしっ」
 思わず声が漏れた。確かにいるのだ。
 室内の隅で膝を抱えて蹲り、おっさんがH君を見ている。

 立ち上がった瞬間に、今度はリモコンを踏んだ。また暗転。

 すると。
 おっさんの姿が消える。

 H君は怖くなって、部屋を飛び出し、隣の兄の部屋のの扉を乱暴に叩いた。
「なんだよ」
 不満顔で現れる兄にしがみつき、「電気をつけると、おっさんが現れる」と自分でもわけの分からない説明を必死にしたらしい。
「おっさんって」
 兄は笑いながら、H君の部屋に入り、照明をつけた。

 そこには。
 もう、誰も居なかったと言う。

「幽霊って、普通、電気を消したら現れるんじゃないですか? なに、あのおっさん。とち狂ってんじゃねぇよ」
 H君は不満そうに私にそう言った。

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