事故物件
投稿者:きのこ (11)
それから何度か鏡を覗いたが、庭が視えたのは、あの一度きりだ。
そんな不思議な鏡なので、もしかしたら鏡の中にいた何かが出てきたのでは。と思った。
男の子が災いを呼ぶ力は異常で、他にそんなに力が強いものには出会したことがない。普通ではないので、鏡の中にいた大昔の何かが出てきたと考えても、何の不思議もない気がする。
しかし、彼の正体が何にしろ、とりあえず取り憑かれると、命にかかわるような災いが降りかかるのは変わらない。
自分の身を守るためには、近付かないようにするのが1番だ。
それに、私の家にいるのは、災いを呼ぶ男の子だけではない。
今は何かと理由をつけて実家を避けているが、次にまた訪れなければいけなくなった時、あの家がどんな状況になっているのかと考えると、恐ろしくて仕方がない。
憂鬱というよりは、恐怖といった方が正しいのかも知れない———。
のエピソード――第15話 事故物件(ホラー)1
事故物件 2
たしかにどの物件も築10年以内で、写真を見る限りは明るく感じる。
———これなら大丈夫かな……。一度は納得した。しかし、しばらくすると今までの苦い経験がふと、脳裏に浮かんできて、不安になった。
『安い部屋』と『事故物件』が、どうしても切り離すことができない。同級生を疑うわけではないが、私は物件情報に目を通しながら、探りを入れた。
「安い物件は、良くないのも多いでしょ」
と、最初は曖昧あいまいな感じで訊いた。
すると彼は、
「変な所には連れて行かないから、大丈夫だよ」と、冗談ぽく言って笑った。
「本当に? 安い物件なんて、何かあるから安くなってるんだろ?」
「同級生にそんな物件紹介しないよ」
「———て事はやっぱり、事故物件も取り扱ってるんだ。それってどの辺りの物件? 教えてよ。言わないからさ」
「ないない、大丈夫だって。心配するなよ」
私はかなりしつこく訊いたが、彼は全く顔色を変えなかった。やはり、不動産関係の仕事をしていると、そういった話題にも慣れているのだろう、と思った。
こちらが何を言ってもサラリとかわして、さすが営業マンといった感じだ。
私は人ならざるものが視えたり、感じたりするのを、いつもは他人に勘付かれないようにして話をしている。バレてしまうと、碌ろくな事がないからだ。
同級生の彼も、もちろんその事は知らなかった。
それなのに私は、会話が弾んでいたのでついつい、
「何かいても、昼間じゃ視えない事が多いから、分からないよね」
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