奇々怪々 お知らせ

心霊

きのこさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

霊道
長編 2024/12/19 10:00 220view

 私は、自分の家が大嫌いだ。

 友人達の心霊スポット巡りに付き合わされたこともあるが、どこの心霊スポットよりも、たくさん何かがいて、嫌な気配のする家だ。

 子供の頃は今よりも、人ならざるもの達がよく視えていたので、学校から帰るのが憂鬱ゆううつで堪たまらなかった。

 学校の中にも得体の知れないものがたくさんいたが、それでも私の家よりは全然マシだ。

 本当なら親に相談したい所だが、私の母は、普通のお母さん達とは少し違っていて、それができなかった。

「天井から、女の人が覗のぞいてるよ」

 私が言うと、まるでゴキブリでも見るかのような冷たい目で、見下ろしてくる。またある時は、

「お父さんより大きな猿みたいなのが、川の中を歩いてるよ」

 私が川を指差すと、川を見て、チッ! と舌打ちをする。そして、

「そんなもの、どこにでもいる!」

 と怒鳴りつけるような母だった。

 幼心に、そんな訳ないだろ。と思ったのを覚えている。

 私の家の周辺は、人ならざるものが集まりやすい。

 それに、普通の子供はそんなものは視えないのだ。

「大丈夫、怖くないよ」とか、優しい言葉をかけてくれるような人だったら、相談することもできたかも知れない。

 学校から帰って家の前に立つと、すでに嫌な気配を感じる。

 母家の隣には、2階建ての建物があり、そこには寝室がある。その2階の窓は、いつも障子しょうじが閉めてある状態だったが、それでも部屋の中から、何かがこちらを見ているのが分かった。

 もちろん、そんな部屋には近付きたくもないが、何かがいるのは分かっていても、幼い頃はその部屋で、家族4人で川の字になって寝ていた。

 和室なので畳が敷いてあって、私の寝る場所は、部屋の1番奥だ。それは母に決められた場所で、押し入れの前だった。

 押し入れの中は、目で見たよりもずっと暗く深い感じがして、本当は嫌だったが、母に布団を敷かれてしまうので、仕方なくそこで寝ていた。

 私は、夜中になると必ず目が覚めてしまう。

 枝を折ったような、バキッという音。

 何かが爆発したような、バンッという大きな音が何度も聞こえる。

 たとえ、ぐっすりと熟睡していたとしても、そんな大きな音がしたら、目が覚めるに決まっている。

 しかし、どんなに大きな音がしても、私以外の家族は、誰も起きることはなかった。おそらく聞こえていないのだと思う。幼い頃は、家族には音が聞こえていないことが不思議だった。

 そして部屋の前の廊下は、夜中になるといつも何かが歩いている。

 部屋の扉はすりガラスになっていて、その前を、ギシッ ギシッ と音を立てて、ゆっくりと行ったり来たりする。
 
 そしてたまに、すりガラスに両手をついて、部屋の中を覗のぞいてきた。

1/3
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。