事故物件
投稿者:きのこ (6)
我が家の仏壇の間には、小さな男の子がいる。
その子は5歳くらいの男の子で、
薄い青色の、浴衣のような服を着ている。
帯の色は紺色で、いつも裸足だ。
家の中に着物っぽい服を着た子供がいると聞くと、大半の人は座敷童ざしきわらしを思い浮かべると思うが、残念ながら仏壇の間の子供は、そんな可愛らしいものではない。
私は彼の存在を認識する度に思う。
彼は霊ではなく、妖怪でもなく、死神なのではないか、と———。
普通の人達にとっては『仏壇にお参りをする』という行為は、先祖に挨拶をしたり日頃の感謝を伝え、加護をもらえたりする、どちらかというとご利益のある行為だと思う。
しかし私にとっては何故か、命懸けの行為だった。
我が家の仏壇の間には、災いを呼ぶ子供がいるからだ。
いつ頃からだったかは忘れたが、その子に取り憑かれると、毎回死にかけるような、悪い事が起こるようになった。
私は常に人ならざるものの姿が視える訳ではないが、近くに来たり、触られると分かる。
男の子は視えていない時でも、私が部屋に近寄ると、まるで親戚の子供が戯じゃれつくように腕に掴まってくる。そんな訳で、いるのは分かるのだ。
腕に目をやっても何も視えないが、掴まっている位置が肘の下くらいなので、きっと彼だろう。と思っている。
私が畳の上に座ると、膝に乗ってきたり、後ろから首に掴まって来たりもするが、その時点では別に取り憑かれた訳ではない。
私が仏壇の間に入ったから、戯れて来ただけだ。
彼はずっと仏壇の間にいる。
ただ、私が幼い頃はいなかった気がする。
いつの間にか現れて、当たり前のようにそこにいた。
そして、理由は分からないが、なぜか取り憑く時は決まって、私が仏壇にお参りをした後だった。
毎回分かっていながら手を合わせるのが、本当に憂鬱ゆううつで堪たまらない。
彼は小さい男の子だったが、取り憑かれると、とんでもない事が起こる———。
あれは、初めて取り憑かれた時の事。
私は中学1年生で、仏壇にお参りをした途端、男の子が腕に掴まって離れなくなった。
すると、急に熱が出始めて、1週間高熱にうなされた。初めて幽体離脱ゆうたいりだつというものを経験したのも、その時だ。
熱が高くて動けないはずなのに、急に体がふわっと浮いて、天井の辺りで振り返ると、ぐったりと横たわる自分の姿が見える。そして、まるで風船が天井に当たるみたいにポンポンと跳ね返って、外へは出られなかった。
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