こっくりさんの恩恵
投稿者:さよなら新人類 (3)
つい昨日。
久しぶりに地元に戻った。中学校の同窓会が開かれるとのことで、知人のつてを辿って連絡が来たのだ。
同窓会自体は楽しかった。久しぶりに同級生や恩師に会えたのは、単純に嬉しかった。
だが、会場のどこを見渡しても、天野の姿が見えない。別件で来られなかったのだろうか。
気になった俺は、共通の友人である川上の姿を見つけ、訊いてみた。
「なあ、天野って今日来ていないのか?」
すると川上は一瞬大きく目を見開き驚いたような表情を一瞬見せ、すぐに何か納得したような表情に変わっていった。
「そうか……お前、高校は別だったもんな」
そう言うと、川上は会場外の喫煙場所へついてくるよう促してきた。
言われた場所に着いたとき、川上の顔はどこか青ざめているように見えた。
川上は煙草に火を付け、深呼吸するようにひとつ吸って吐くと、こう言った。
「天野な……亡くなったんだよ。高校に進んで間もない頃だったよ」
「えっ!?」
まさかの回答だった。
おそらく、俺は信じられないという表情をしていたのだろう。川上はそんな俺を一瞥し、話を続けた。
「あいつがホームページをやっていたのは覚えているだろ?」
「犬を飼い始めたら、とたんに人気になってたよな。確か2匹目も飼うとか言ってたような……」
「それ。2匹目を迎えたらまたホームページで反響があって、それであいつもあいつの家族も調子に乗っちゃってさ。気がつけばどんどん新しい犬を飼い始めたんだとさ。ひょっとすると、ホームページでの強い反響が忘れられなかったのかもしれない」
「でもそんなに飼っていったら、費用がかかるんじゃ……」
「そうなんだよ。そのうち自分たちの生活費を工面してまで飼育費を賄ってたらしい。でもそんな生活が続くはずもなくて、生活費も飼育費もなくなりそうだって、あいつ泣きながら言ってたよ」
「そうだったんだ……」
「で、そう言った次の日だ」
川上は、さっきよりも煙草を長く吸い、煙をゆっくり吐き出して続けた。
「天野も、家族も、みんな家で死んでいた。全員、まるで獣に食い殺されたかのような状態だったらしい」
「!」
「でさ、気になるのは今まで飼っていた犬たちじゃん? どうやらその現場には、一匹たりと残っていなかったようだ」
「てことは……」
「まあたぶん、そういうことだろうな。腹を空かせた犬たちが天野の家族を……俺はそう思ってる。だけど結局、遺体の状態があまりにひどく、証拠となりそうなものもなにも残っていなかったから、事故として処理されてしまったそうだ」
「……」
川上も、家族も、みんな家で死んでいた。のところ川上じゃなくて天野じゃないですか
さよなら新人類です。ご指摘、ありがとうございました。
訂正いたしました。