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ヒトコワ

さよなら新人類さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

情報誌の中に……
短編 2025/01/09 19:40 272view

自慢じゃないが、俺には一度も彼女ができたことがない。だけど、性欲は人並みにある。
そうなると世話になるのが、風俗だ。ソープとかメンズエステとか色々利用してきたが、最終的にはデリヘルに落ち着いた。

その日も俺は、行きつけのデリヘル店に電話し、フリー指名を頼んでから最寄りのホテルへと赴いた。
フリーということもありさほど期待はしていなかったのだが、やって来た女の子は俺の想像を遥かに上回る美人だった。それだけではなく、表情も豊かで話も上手く、スタイル抜群。のちに、プレイ中の相性も最高だと思い知らされた。
すっかり彼女を気に入った俺は延長を頼んだが、もう既に次の予約が入ってるとかで、時間きっちりに部屋を去っていった。またね、の言葉とウィンクを残して。

あまりの相性の良さに、俺が次の休日にもその娘を指名し、同じホテルへと向かったのだった。
ホテルに入室してからも、俺はワクワクが止まらず室内をうろうろしていた。あまりの楽しみにどうにも落ち着かず、設備をチェックしたり有料放送をなんとなく眺めたり、とにかく色々なことをした。
と、そのとき目にとまったものがあった。それは、その手の店の広告情報誌だった。恐らく、ホテルに入室したはいいものの、誰を呼ぶのか決めかねている人に向けたものなのだろう。
俺はもう既に彼女を呼んでいるので不要ではあるが、時間つぶしに読んでみることにした。

ページをめくると、出てくる出てくる色っぽいお姉さん達の写真。ここいらは寂れた地方ではあるが、今でもそこそこの数の店がどうにか広告を出せるほどには頑張っているらしい。
どこも頑張っているんだな、と妙な感心をしながら読み進めていたとき。
ページをめくる手が、ふと止まった。と同時に、俺の目はあるものに釘付けとなった。

そのページは、まさしく俺が電話指名した店の広告に他ならなかったのだが、こちらを見て微笑む女性の一人が黒く塗りつぶされていたのだ。

……いや、正確には恐らく女性の誰かが掲載されていたであろう場所、と言うべきか。

女性がずらっと並んでいるうちの一人分だけが、マジックか何かを使ってすっかり塗りつぶされていたのだ。まるで、最初から存在を消してしまうかのように、黒々と。

「うわっ、何してんだよ……」
そんな言葉が、思わず口から漏れ出る。と同時に、部屋をノックする音が聞こえた。
ドアを開けると、彼女が、満面の笑みで立っていたのだった。

おおよそのすることが終わり、俺と彼女はベッドでピロートークを楽しんでいた。
そのとき、俺はふと思いついて、例の情報誌のことを彼女に教えてみることにした。
「そういえばさ、今そこの情報誌読んでみたんだけど、ひどいことする奴もいるもんだよな」
「えっ、何かありましたかぁ?」
不思議そうに首をかしげる彼女に、あのページの黒く塗りつぶされているところを指し示した。
「ほらここ。いったい、誰が写ってたんだろうな」
すると、それまで愛想良く対応してくれていた彼女の顔から、ふっと笑顔が消えた。そして、

「そこに写ってるの、私だ」

聞いたことがないような、低く冷たい声で、そう言った。

ヤバい。話してはいけないことだったかもしれない。訊かなきゃよかった。そう思ったが、時既に遅し。
そこから慌てて話題を変え、どうにか彼女の気を逸らそうとしたが、とうとう最後まで彼女の表情が明るくなることはなかった。

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