東風吹かば毒の雨
投稿者:セイスケくん (31)
《東風の呪い》
次に聞いたのは、海辺の村に伝わる「東風の呪い」だった。
昔から和歌などにも登場する「東風(こち)」は、風情のある美しいものとされていたが、この村ではそれが恐ろしい呪いの前触れとして恐れられていた。
東風が吹くたび、村の人々は体調を崩し、激しい頭痛や吐き気、めまいに苦しむ者が続出した。
病気にかかる者が多く、あっという間に寝込む者も多かった。
村人たちは言った。
「この風は災いをもたらす。呪いの風だ」と。
風が吹いた晩、海岸には見たこともない不思議な物が漂着することが多かった。
それは人の形に似た木片であったり、何とも言えないぬるぬるした塊であったりした。
興味本位でそれを拾った若者が、翌日から高熱にうなされ、死に至ったこともあった。
その死を見た村人たちは、それを呪いの証拠だと信じ、その漂着物に決して触れないようにし、東風が吹いた時には必ず祈りを捧げるようにした。
さらに奇妙なことがあった。
東風が強まる夜には、必ず犬たちが遠吠えを始めるのだ。
その遠吠えがやんだ翌朝、村の誰かが必ず死ぬという言い伝えがあった。
恐ろしいことに、それは確実に当たった。
毎回、何人かの村人はその死を免れなかった。
誰もその理由を説明できなかったが、確かにその現象は繰り返されていた。
科学者たちは、低気圧による体調不良や湿度の上昇が原因だと説明した。
しかし、犬の遠吠えとその後の死者との関連については、いまだ解明されていない。
村人たちは、科学的な解釈を信じる者もいれば、それでもなお呪いを信じる者も多く、どちらも納得のいく説明を見つけられなかった。
《自然の力と人間の傲慢》
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