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rarkさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

昨日の夜、僕は殺し屋でした
短編 2024/11/22 20:14 257view

「昨日の夜、僕は殺し屋でした」

街灯もない真っ暗な路地。10メートル程先に人がいる。自分の右手には、金属バットが握られている。
1歩…また1歩と足を進める。音を立てないように…。バレないように…。
そしてその人との距離が1メートル程になった時。身体が動かなくなる。躊躇している。内心とてつもなくビビってる。しかし、すぐに自分の中で何かがプツンと切れたような気がした瞬時に、僕はバットを振り上げる。
僕は殺し屋だ。とは言っても、それは夢の中での話だ。しかしここ最近、毎日のように人を殺す夢を見る。
この夢を始めに見たのは、ちょうど一週間前。高熱が出た日の夜。それは、これが夢だ。と、自分で気づいく明晰夢だった。どこかの町だろうか?自分の右手には、刃渡数センチの刃物が握られている。数十メートル先には暗くてよく見えないが、人が歩いている。その人の歩く速度に合わせて、僕の足は動いていた。まるでゲームのチュートリアルでもやっているかのようだ。
すると突然、脇道から女の人が出てきた。その女を追うように、目の前を歩いている男が早歩きになる。それと同時に僕は駆け出した。6メートル、4メートル、男との距離が段々と近づいていく中、男の右手に刃物が握られていることに気づく。が、僕の足は止まらない。その男を追い抜いたと思った瞬間、僕は立ち止まり、それと同時に男の首。軽動脈を掻っ切っていた。
夢では自分の知っている顔しか出ない。と言われているが、自分が今見下ろしている殺した男の顔は、全く見覚えがなかった。持っている刃物に反射した自分の顔は、恐ろしく冷たい目をしていた。
そこで目が覚めた。夢の中での、人を斬り殺したリアルな感触とあの冷たい目は、目覚めてなお抜けないでいた。熱は驚くほどに下がっていた。

2日目の夜。僕が手に持っていたのは拳銃だった。あたりを見渡す。広大な荒地と、ボロボロの石造りの建物と木の柵。日本ではない。海外だろうか?

目の前には、ボロボロな布に身を包んだ、褐色の肌の男性が建物に倒れ込むように座っている。俯いていて、こちらには気づいていないようだ。
そっと引き金に指をかける。そのまま銃口をゆっくりと男に向けた瞬時、引き金を引く。あまり音はならないが、確実に当たっている。が、まだ夢は終わらなかった。もう一度引き金を引く。3発目を撃ったところで夢は終わった。普段では知り得ないであろう銃の扱い方も、夢の中の自分は簡単にやってみせた。それよりも怖かったのは、二発目以降は、自分の意思で撃っていたということだ。それまでは身体が勝手に動くような感覚だったが、二発目以降の引き金は、確かに自分の意思で引いていた…。

殴殺、毒殺、焼殺…。そこからも同じような夢が続いた。日を追うごとに、自分の意思で行動する時間が長くなっているような感じがする。それと同時に、誰かに見られているような感覚も強くなっている。学校で友達に相談してみても、
「お前、前世殺し屋だったんじゃねーの?」
と、笑い話で終わるだけ。
そして今日で、人を殺す夢を見始めて、ちょうど7日が経つ。いつまでこんな夢を見ればいいのか。眠りに入るのが怖い…目を瞑るのが怖い…。そうは思っても、眠気は無残に襲ってくる。夢の中で目を開ける…。風景は違えど、いつもと同じ感覚。いや、違う。いつも夢の序盤にあった、身体が勝手に動くような感覚が何ない。
(まいったな…。)
深くため息を吐き、ゆっくりと前を見る…。心臓の鼓動が速くなる。街灯もない真っ暗な路地。10メートル程先に人がいる。自分の右手には、金属バットが握られている。(殺る…のか…?)
1歩…また1歩と足を進める。音を立てないように…。(俺はただの人殺しなのか…?)
バレないように…。(違う…!)

そしてその人との距離が1メートル程になった時。身体が動かなくなる。躊躇している。内心とてつもなくビビってる。しかし、(殺せば…夢から覚める…!)すぐに自分の中で何かがプツンと切れたような気がした瞬時に、俺はバットを振り上げる。そして思いっきり後頭部へと振り下ろす。
ガンッ!!
その人が地面に倒れる。しかし、夢は終わらない。ガンッ! ガンッ! ガンッ!
(覚めろ!覚めろ!覚めろ!)そう願いながら、バットを振り下ろす。しかし、何度やっても夢から覚めない。(ハァ…ハァ…!)ふと、自分の中で、とある疑問が生まれる。
自分はこれまで、ターゲットを殺せば夢から覚めると思い込んでいたのではないか?
(……!?)
カランッ…。
右手の握力が無くなる。自分の持っていたバットが、手のひらから滑り落ちる。信じられない。今の今で殴殺した相手が、目の前に立っている。違う。いや、それも異常だが、今僕の目の前に立っている男。
(……嘘だ。)
それは、頭から血を流した僕だった。
何も言葉が出ない。僕が動揺していると、目の前にいる自分が僕の肩を掴み、顔を近づけて言った。

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