深夜のコンビニ老人
投稿者:セイスケくん (20)
僕は背筋が寒くなるのを感じた。「山田さん、それ以上深入りするのは危険です。あなた自身にも影響が出ていますよ」
「でも、放っておけないんだ。彼の悲しみを見過ごすことはできない」
それから数日後、山田さんは突然仕事を辞めると言い出した。
「どうしたんですか?急に辞めるなんて」
「やるべきことが見つかったんだ。心配しないでくれ」
彼の目はどこか焦点が合っていないようで、不安が募った。
心配になった僕は、山田さんの自宅を訪ねてみることにした。しかし、彼の部屋は荒れ果てており、彼の姿はなかった。机の上には、一冊の古びたノートが残されていた。
ノートを開くと、老人についての詳細な調査がびっしりと書き込まれていた。事件の背景、儀式の方法、シンボルの意味。彼は深く事件にのめり込み、何かに取り憑かれたようだった。
ノートの最後のページには、震える文字でこう書かれていた。
「彼の悲しみは、俺の悲しみ。家族を取り戻すために、俺も儀式を行うべきだ。そうすれば、全てが救われる」
不安が胸を締め付けた。山田さんは危険な領域に足を踏み入れてしまったのか。
僕は真相を突き止めるため、さらに調査を進めた。図書館で古い新聞記事や事件記録を調べ、20年前の一家心中事件の詳細を知った。事件現場には不気味なシンボルが描かれ、近隣住民は夜な夜な奇妙な声や光を目撃したと証言していた。
そのシンボルは、山田さんのノートに描かれていたものと一致していた。それは古代の呪術で、禁忌とされる魂の召喚に関わるものだった。
次の金曜の夜、僕は覚悟を決めて店に立った。時計が11時50分を指すと、扉のチャイムが鳴り、老人が現れた。彼の背後には、不自然に長く伸びる影がうごめいていた。
「待ってください!」僕は震える声で呼び止めた。
老人はゆっくりと振り返り、その灰色の瞳で僕を見つめた。
「何の用だ」
「あなたが求めているものは、本当に取り戻せるのですか?その代償は計り知れないものではありませんか?」
老人の表情が一瞬揺らいだ。「私はただ、家族に会いたいだけだ。それが何よりも大切なんだ」
「でも、その方法は間違っています。あなた自身も、他の人々も傷つけてしまう」
その瞬間、店内の照明が激しくチラつき、強い風が吹き荒れた。商品の棚が倒れ、ガラスが割れる音が響く。影が店内を覆い尽くし、冷たい闇が迫ってくる。
僕はポケットから山田さんのノートを取り出し、シンボルを逆に描いたページを開いた。そして、心の中で強く念じた。
「この呪縛を解き放ち、魂を安らかにしてください!」
老人は苦しげな声を上げ、その場に崩れ落ちた。影はゆっくりと消え、店内の騒音も静まり返った。
老人は涙を流しながら、か細い声で言った。
「ありがとう……これでやっと、解放される……」
その顔には、長年の苦しみから解放された安らぎが漂っていた。
その時、店の扉が再び開き、山田さんが現れた。しかし、その姿はどこか透き通っており、まるで幻のようだった。
「山田さん!」
彼は優しく微笑み、「翔太、君のおかげで目が覚めたよ。俺は彼の悲しみに取り込まれていた。でも、もう大丈夫だ。ありがとう」と言った。
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