その隣には迷彩色の軍服姿をした体格の良い黒人と、会ったこともないワイシャツ姿の若い男。
皆笑顔で彼の方を見上げながら手を振っていた。
澁谷も笑顔で大きく手を振ると、ゆっくり立ち上がる。
彼方に建ち並ぶビルの一角から、灰色の煙がもうもうとたちあがっていた。
どこからだろう消防車のサイレン音が微かに鳴り響いている。
彼は満足げに一つ頷くとジャンプし、虚空に身を任せた。
【了】
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オカルト的な怖さより普通の人が正気を失って行く様がとても怖い。それが戦時下であれ企業であれ平気で追い詰めて行く人の存在はもっと怖い。
コメントありがとうございます
正に人間の所業こそが恐怖です
━ねこじろう
会社の人達(田中さんを含む)の主人公に対する接し方の違いが緻密に書かれているのが良い!主人公は「訳あり部署」で一人仕事をさせられる孤独感や虚しさ、哀しみを、田中さんとの会話で紛らわしていたのでしょうか。
このお話の田中さんが好きで、時々読みに来ています。総務部資料係の男性は温厚そうですが、本当に主人公に純粋な好感を寄せていたのでしょうか。穿った見方かもしれませんが、小癪な大学の同期が自滅行為をしてくれたので、安堵しているのかもと思いました。