元お笑い芸人の恐怖ロケ体験談

昼間は山に囲まれた湖が一望できてほんま景色良かったんやけど、夜は真っ暗で何も見えんし、橋もポツンポツンと街灯があるだけで薄暗いしかなり気味が悪かった。

それで俺が先に行こう言うたら、ディレクターがまた言うんよ。

「藤原さん、バンジー飛びましょうよ」

と。いやいやさっき自分冗談言うてたやん！て言いかけたら、ディレクターの目が笑ってないのよ。ADも無表情で俺をじっと見てて。何これどっきり？と思うも何か様子がおかしい。2人が別人みたいな感じがしてきてな。あかん、これやばいヤツちゃうか？そう思ったら足がすくみ始めてね。ADがバンジーのジャンプ台の施錠をどうやったか開けて「こっち来てください」と俺を引っ張るのよ、2人掛かりで。

足に力入らんから、ジャンプ台まで引きずられてしもうて「これ、ドッキリやろ？」と震える声で訊いたら、2人は何も答えない。ディレクターが「じゃ、飛びましょう」と言い出したんやけど、俺はロープもつけてない。

「ロープは？」

と訊く俺に、「ええから飛びましょう」と迫ってくる。「いや、それじゃ死ぬって」と言うと「大丈夫ですよ。みんな待ってますから」と返された。「無理無理無理！」とフェンスにしがみ付いていると、ADが俺の手をフェンスから引きはがしてくる。それが凄い力なんですよ。それでもうダメや！思ってたら、急にバチーン！と目の前が真っ白になりましてね。

「お前何やってるねん！」

相方の怒鳴り声がして、ハッとして声の方向見たら相方たちがいた。状況わからんくて「何？何？」と困惑する俺に「お前死ぬ気か！？」と相方が一発ビンタをかましてきた。意味がわからなくて話を聞くと、こんな説明をされた。

俺は湖に落ちたあと、ADと一緒に着替えに行った。ロケバスに1人着替えに入ったはいいが、いくら待っても出てこない。そこでADが中を覗いたら俺の姿が無かったそうや。ほんで大騒ぎになってあたりを探してみたが俺が見つからない。ほんで橋まで来たら、俺がバンジー台からダイブしようとしていたところを見つけたっちゅう話や。

俺もわけわからんくて、一応の説明はしたけどみんなあまり納得してなかった。

それでロケは中断。キャンプ場で1泊予定だったけど、急遽近くのホテルに泊まって。翌日は全員でお祓いに行くことになった。特に何かに憑りつかれたってわけではなかったのか、その後誰かに何か起きたって話は聞かんかった。

で、番組では俺が飛び降りようとしていたちゅう話とかはカットしてたけど、変なものを見たってことで編集されてた。

今はコンビ解散して、相方はピン芸人を細々やって、俺はお好み焼き屋をやっとる。

よく相方が来てくれるけど、たまにあのときの話になるよ。その話になると、お前ホンマに死ぬところやったんやぞ、と相方は絶対にそれを口にする。解散まで相方には迷惑かけっぱなしやったから、今も頭はあがらんけどな。こうして生きていられるのも相方のおかげかもしれん。

という俺の体験談でした。

※こちらのお話をご紹介いただいたあと、藤原さんはお亡くなりになりました。

飛び降り自殺でした。