マッチングアプリの怪物
投稿者:ねこまんま (1)
僕の頭の中はどうやってこの窮地を切り抜けるかでいっぱいになっていました。
そんな僕の心情に追い討ちをかけるようにAさんが僕の手をさすりながら言葉を投げかけてきます。
「さっきのお会計の時に私の事を女性扱いしてくれたの、すごい嬉しかったわぁ
あんなにドキドキしたの本当に久しぶりだったわ」
しまった…!
僕はここで自分の犯した過ちに気づきました。
『いえ、楽しい時間を過ごさせていただいたので!それに歳上でも女性に出させるのはマナー違反なので僕に出させてください!』
僕はお会計の時に言った自分の言葉を思い出しました。
あんな事を言わなければAさんにここまで気に入られる事もなかったんだ…と
しかしいくら後悔の念を喚いた所でもう時既に遅しでした。
「ねえ、私と付き合おうよ」
唐突にAさんが告白してきました。
僕がどう返事をしていいかわからずに口篭っていると
「付き合うって言うまでヤらせてあげない、そんな煮え切らない態度じゃ女性は抱けないよ?ねぇどうするの?」
と究極の2択を迫ってきました。
もちろん僕の答えはNOでしたがそれを面と向かって言ってしまえば何となく恐ろしい目に遭いそうな気がして口に出せずにいました。
しかしここでその場しのぎにYESと答えてもこの巨漢のAさんと体を交える事になる…
どの道を選んでも僕を待ち受けているのは地獄です。
この土壇場に来て僕が導き出した答えは
「沈黙」でした。
Aさんが諦めるまで黙り通す事でなんとかこの状況を打破しようとしたのです。
「ねぇ付き合うの?付き合わないの?どっち?」
しきりにAさんが回答を急かしてきます。
負けじと僕が黙秘を貫いていると突然Aさんが自分のスマートフォンを思いっきり壁に投げつけて
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!付き合え!!付き合え!!付き合えよぉぉぉぉぉ!!」
と顔を真っ赤にして泣き叫び
まるで子供が駄々をこねるように床に寝転がって手足をドタドタと乱舞させていました。
そのあまりの剣幕と迫力に怖気付いてしまった僕は
「わかりました!付き合います!付き合うのでもうやめてください!」
とつい叫んでしまいました。
するとAさんはピタッと動きを止めて起き上がり
「それじゃあこれからは△△くんが彼氏だ、大切にしてね」
と言ってギュッと抱きしめてきました。
「は…はい…」
恐怖のあまり声を震わせながらそう返事をする事で精一杯でした。
あの暴れ方は普通じゃない、抵抗なんてしようものなら本当に何をされるかわからない
僕はとにかくAさんを怒らせないように穏便に対応して隙あらば逃げ出す事にしました。
僕は再び大人しくAさんの隣に腰掛けました。
話は違うが、格安風俗に行った時のことを思い出した。
出てきたのがフツーの60代半ばくらいのかなり瘦せた人(それ専門系の店ではない)。
この手の怖い(?)話には、案外似たような体験が元になっているのかもしれない。
悪夢でしたね。
事実は小説より奇なりですね。
怖かったと思います。