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心霊

horiedonさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

披露宴にて
短編 2024/09/16 23:00 325view

その日、私は同僚の結婚式に招かれて都内の某ホテルを訪れていた。

彼とは、配属地域が決まった後に同じ地域になった人達で行った旅行で一緒だったが、部署が違うため普段から言葉を交わすことは無く、とくべつ性格や話が合う事もまた無かった。

だからこそ、3か月ほど前、会社から戻ったある夜中に彼から結婚式のお誘いのLINEを頂いた時は、予想外の相手から来た唐突な報告に驚いた。

だが同時に、同世代として彼を祝福してあげたい気持ちがしみじみと湧いてきて、私はその誘いを快諾した。

私の周りを見る限りでは、新卒入社から1、2年(年齢で言えば23、4歳)というタイミングでの結婚は、世間的に珍しいのではないだろうか。

式はホテルに隣接したチャペルで行われ、その後フラワーシャワーと挙式の鐘を経て、披露宴の時間となった。

ホテル最上階の会場に着くと、私は受付でもらったパンフレットを頼りにテーブルに向かい、指定された席についた。

会社関係者の席は新郎新婦の目の前とかなり近く、何だか気が引けてしまった。

目の前は一面のガラス張りで、街の夜景をパノラマで一望できた。

私が景色に気を取られている所にウエイターがやってきて、ドリンクについて訊いてきた。少し洒落た気分になっていた私は白ワインを頼んだ。

ウエイターはテーブルの他のゲストの注文も取りまとめた後、窓沿いに会場の左端まで歩いてゆき、暗がりへ伸びる通路に消えた。入れ違いに別のウエイターがそこから出てきた。恐らく厨房に通じているのだろう。

その通路に、下半身裸で白シャツだけをまとった男がこちら向きに肩で壁に寄りかかる様に立っていた。髪はぼうぼうに伸びて目元を完全に隠しており、苦しそうに顎を突き出して首のあたりをかきむしっていた。少なくとも式場関係者では断じてない。ただ、私はその様子に何故か既視感を覚えた。

ウエイターたちは彼の横を素知らぬ顔をして通り過ぎていく。付近の席にいる人も含めて誰も彼の存在に気付いている素振りは無かった。

それから、司会が話し始め、ビデオが流れ、各関係者代表のスピーチが終わるころになっても、その男は一向に姿を消さなかった。

いつになったら消えてくれるのかソワソワする私の前で、新郎新婦のもとに両家が集合し写真撮影の時間が訪れた。

変な趣味かもしれないが、私はこのように他人の家族を前にすると、顔つきや体形が親から子にどのように遺伝したか見比べる事がよくある。

新郎は垂れ目とくっきりとした鼻が母親と瓜二つで、すらりと伸びた身体と手足も母親の特徴を受け継いでいた。一方で新婦は目つきが父親譲りの切れ長で、ぽってりとした唇となで肩に母親の容姿の断片を漂わせていた。

写真撮影の時間が終わり、両家が席に戻ろうとするときだった。

新郎の母親が何気なく通路の方に目を向けたあと、その表情が一瞬固まった様に見えた。

同時に、男に対する既視感の正体が解けた。男の口元と顎の輪郭が新郎のものとそっくりだったのだ。

私が再び通路を見ると、彼はもうそこに居なかった。

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