子供が大人になるまでは
投稿者:太山みせる (35)
…でも、それは間違いだった
ライバルたちは蝶子のあまりの傲慢さに、ついていけなくなり撤退しただけだったんだ
そして、彼女は残りもののオレと付き合うことにしたんだ
オレは長らく、そのことに気がつかなかった
学内のあちこちを2人で歩き、蝶子の恋人だとアピールしまくったが、思い返せば誰一人、羨ましそうに見ていた者は いなかったような気がする
しかしオレは有頂天で、大企業の社長令嬢と付き合ったことを両親に報告した
能天気な親は、結婚できたら将来はあなたがそこの社長ねと喜んでいたよ
オレたちは熱々のカップルだった
相変わらず蝶子は我儘で傲慢だったが、オレの献身ぶりを気に入ってくれたようで、常にオレを自分のそばから離さなかったのだから
付き合ってちょっとした時に、蝶子から父に会って欲しいと言われたんだ
家に行ったら、まずはそのとんでもない豪邸に驚いたよ
巨大な庭に、巨大でオシャレなお屋敷だよ!
その頃は珍しかった洋館でね、使用人もたくさんいて、流石大金持ち、という感じだった
中に入ると、立派なシャンデリアや高そうな調度品がたくさんあって、思わずキョロキョロしちゃったよ
蝶子は父子家庭で父親は娘には甘いけど、男にはとても厳しくて、初対面のオレに色々質問をしてきたんだ
難しい話ばかりで、何も答えられなかったら、
『人柄も知性も不合格だ』
と言われちゃったけど、一人っ子の蝶子にベタ甘だったからか、娘が君を好きなうちは付き合っても良いと、交際を許可してくれたんだ
翌年、彼女の要望でオレたちは学生結婚をした
苗字もオレが変えて、婿養子になったよ
就職も、蝶子の父の会社に入れてもらったんだ
だけど仕事には殆ど行かなかった
蝶子が離してくれなかったからね
あまり働いてないのにお金はあったから、夫婦2人で旅行をしまくったよ
これで将来は社長になって、いつまでも楽をして暮らせるなんて幸せだ…と最初は思っていた
ところがね、次第に飽きてきたんだ
どこに行っても蝶子と一緒、遊んでるだけ…
何の達成感もないし、これが死ぬまで続くのか?これで良いのか?という疑問と焦りが生まれてきたんだ
蝶子が離してくれないから自由が全くないし、実家にも帰れない
独占欲が異常に強い蝶子は、オレが実の親に会うのも、通話するのも許してくれないんだ
1人にすらなれなくて、窮屈で仕方がなかったよ
とうとう我慢できなくなって、少しは1人にさせてくれと言ったら怒り出して、刃物を投げつけてきたんだ
腕に刺さって怪我をしたよ
それをキッカケに、オレは家出をした
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