私　そこに吊られていますから

６月１５日③
朝飯はなんとか食べれたが、目眩が続く・・・
遠い隣町にある神社まで自転車を走らせた疲れが出たのだろうか。
しかし、今日は怪談朗読生配信の日だ。
なんとか体調を盛り返さなければ。
それに今日の朗読リストには、バクシマの怪談はない。　
その点は安心感がある。
・・・結果として、その日朗読した怪談は、すべからく怖くて素晴らしいものだった。
朝になると、体調が回復していた。
さしずめ、昨日の体調不良は、バクシマの呪いだったのだろう・・・
いや、考えすぎか。なんでもかんでも奴のせいにしてもいかんな。
スマンな、バクシマ。
さて、心から謝ったことだしラーメンでも食いにいこうか。雨だ。バクシマめ。
その日の夕方、銭湯で湯船につかる。
日焼けがクソ痛い。バクシマめ。
病み上がりだし、赤マムシでも飲んで寝るか・・・

寝ながら、先日に自転車で神社に行った写真を見返す。
「ほえ？なんだこれ？」
神社の写真を拡大してみる。
ゾッとした。
石燈籠（いしどうろう）の穴の中に見知らぬ顔があり、こちらを見つめている。
もしかして体調不良は、霊障だったのか？
俺は塩を部屋に撒いて寝た。
しかし、寝ているときに、誰かが耳元で呟いた気がした。
「ヤラナイカ・・・」

それから数日後
その日、俺は自炊をしていた。メニューはオムライスだ。
常温で賞味期限切れの卵しか無いが、熱を通せば、まあええやろ。
そして出来上がったオムライスは実に美味そうだった。
しかし、食べている最中、また急に寒気が走った。
なんだろう。なんか怖い。
思わず「ベストだあああああ！！」

って叫びたくなったけどやめた。大人だから。
結局オムライスは半分しか食べきれなかった。
・・・その日の深夜、食欲不振と高熱におかされた。
近くの病院で診てもらったら、食中毒だった。
これは、今週の配信は無理そうだな。
土日は寝て過ごすとしよう・・・
それから、徐々にゼリー程度なら食べられるようになり、
やがてはカップラーメンを食べられるまでに回復した。
しかし、それでもコンビニでは、わさびの消毒作用に期待して、チャーシューわさびのおにぎりをチョイスしたのだった。
しばらく自炊は懲り懲りだな。
おのれ
賞味期限切れの卵を食べてしまった自分め
憎らしく、オムライスの画像を見返す。
「アレ？」
画像を拡大してみる。
「・・・この人、ダレ？」
スプーンに、知らないひとが反射していた。
・・・もしかして、俺はナニカに取り憑かれているのか？