私 そこに吊られていますから
投稿者:バクシマ (40)
6月29日④
せっかくの土曜日なのにいつもと同じ時間に起きてしまった。
とりあえず朝ごはんを食べて、自転車で出かけた。
今日は夜に配信がある。今から気持ちが引き締まるな。
そして夜、俺は予定通り怪談朗読の生配信をした。
配信はつつがなく終わった。
さて、無事に配信も終えたし、さっさと寝るとしようか。
ベッドに横たわっていると、外から虫の鳴き声が聞こえた。
・・・最近、夏の訪れを随所に感じられる。
朝目覚めるたびにセミの抜け殻が横にいるし、
冷やしキュウリだったものが道端に落ちているのも見かけた。
しかし、この暑くて寝苦しい夜が続くのはなんとかならんかな。
加えて、どうも近頃エアコンの効きが悪い気がする。
もはや鼻息の方が涼しいのではないか?
かと言って酒を飲んで寝ようとするのもいけない。
ついつい飲みすぎてしまうのだ。
仕方ない。
怪談サイトで次に朗読する怪談を探しつつ、寝るとしますか。
「む?」
バクシマが、また妙な話を出していた。
7月6日⑤
その日は怪談朗読の生配信の日だった。
そこで、ついまた気の迷いで、バクシマのエセ怪談を朗読してしまった。小賢しい系とおちゃらけ系であった。
「拝啓おふくろさま」・・・どうやらクロマティ高校の冒頭を真似たかったらしい。
まあ、このへんは置いておいて、その後に朗読した人形の話などは実に怖くて、良質な怪談だった。良い気分だ。
しかし、
怪談朗読の生配信から2日後、突如バクシマからSNSでメッセージが来た。
「茶幻さんをテーマにした怪談を書いてもよろしいでしょうか?解釈によりますが悪い様には致しません。
怪談の手前、被害者にはなるのですが・・・」
は?俺をテーマの怪談?
テーマってどういうことだ?
怪談系Vチューバーの話ってことか?
バ美肉の話がウケたからコスろうってハラか?
浅はかな。
思わず、ふーっと溜め息をつく
ふと、部屋を見渡してみれば、物が溢れていた。
気分変えに断捨離でもしようかな。
「それにしても、変なやつに目をつけられてしまったな」
もう、アイツの怪談を配信にあげるのはやめよう・・・
バクシマを断捨離したい。
たが後日・・・
それは豆腐とトマトでカプレーゼを作ろうとしていたときのことだった。
またもや唐突にバクシマからSNSにメッセージが届いたのだ。
「そういえば、前回の人形の話では、うっかり私の声が入ってましたね。邪魔をしてしまい申し訳ありません」
は?なんだそれ?なに言ってんの?
メッセージの意味が分からず、前回の配信のアーカイブを確認した。
そして改めて、自分が朗読している人形の怪異の話に傾聴した。
それは、主人公が呪いの人形を買い、自宅に持ち帰るシーンを読んでいるときだった。
「これは・・・」
知らない声が入っていた。
・・・俺は、バクシマに取り憑かれているのか?
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