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意味怖(意味がわかると怖い話)

綿貫 一さんによる意味怖(意味がわかると怖い話)にまつわる怖い話の投稿です

あの夏への扉
長編 2024/06/05 22:43 16,073view
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今どきの子供はませているというか、変に語彙が豊富で困る。

「お客にそういうことを云うもんじゃないなぁ。
私は、夏休み明けから君達の学校に赴任する教師だよ。
君のクラス担任の先生に、希ちゃんには特別たくさん宿題を出してくれ、と伝えておくことにしよう」

もちろん、私は教師などではない。
しかし、私の適当な嘘に、希はばつの悪そうな顔をして擦り寄ってくる。
もみ手でもしそうな勢いだ。現金な子だ。

「へへへ……それを早く云ってよ、やだなあ。
あ、そうだ。先生、こっち来たばかりなんでしょ?
希、案内してあげよっか?」

「へえ、それはありがたいけど、君、店番があるんだろう? 勝手に抜け出したらまずくないか?」

希は大丈夫と云うと、奥へ引っ込んだ。
そしてすぐに戻ってくる。
手の中には「本日閉店」と書かれたプレートがあった。

「適当だなあ」

「いいのいいの」

希が屈託なく笑う。
紗雪に似た笑顔で。

§

§

§

僕が紗雪に出逢ったのは、小学3年の夏休み――この町で過ごした、最後の夏のことだった。

『ごめーん! それ、私のー!』

小川を流れてきた麦わら帽子を、なんだろうとすくい上げた僕に、遠くから呼びかける声が響いた。
声のする方を見ると、同い年くらいの女の子が、息を切らせて走ってくるところだった。
彼女は僕の側までやってくると、がくりと膝を折った。肩を激しく上下させている。

『はあ……、そ、それ…、はあ、わ、たし、はあ、の…』

『一旦、息を整えなよ』

僕はへたり込む少女を、拾った麦わら帽子であおいでやった。
しばらくして落ち着いたのか、僕のことを見上げて微笑んだ彼女。

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コメント(1)
  • 【吉良吉影!雪女に会う~少年時代 特別編~①】
    何となくこれを思ったw

    2024/06/07/06:48

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