あの夏への扉
投稿者:綿貫 一 (31)
うまい棒、フルーツ餅、梅ジャム、粉末ジュース。
平台に所せましと並べられた、色とりどりの駄菓子たち。
壁には手作りグライダーキットや、パチンコ、花火などが掛けられていた。
お菓子と玩具に満たされた、子供にとっての夢の空間。
その主たる、店主の姿は見えなかった。
壁際にはアイスボックスが置かれていた。
私はガラスの扉を開けて、中を覗きこむ。
冷気が、顔と腕を叩く。
ガリガリくん、スイカバー、パピコ。
私は、もしかしてという淡い期待を胸に、ボックスの中を漁る。
と、家庭用ロックアイスの袋の陰に、それを発見した。
ラムネアイス。
中に小さなラムネ菓子が練り込まれていて、口の中でしゅわしゅわと弾ける。
ラムネ味の爽やかな甘みが、幼い頃から好きだった。
昔ながらのパッケージだ。
お目当てのものを手にとり、店の奥を覗く。
相変わらず人の気配がなかったので、仕方なしに声をかけてみた。
しばらくすると、奥からドタバタと騒がしい足音が聞こえ、子供が顔を出した。
「はーい、いらっしゃいませー」
肩までかかる黒髪、好奇心に溢れたくりくりした瞳、ノースリーブの白いワンピースを着た、小学3、4年生くらいの女の子。
「紗雪(さゆき)――?」
女の子はきょとんとした顔をする。
「――え? 誰? 私は希(のぞみ)だよ?」
私は、はっとして取り繕う。
「ごめん、君が昔の知り合いに似ていてね。
お店の子かな? これをください」
アイスの代金を手渡す。
硬貨を受け取ったのは、白くて小さく冷たい手のひらだった。
「おじさん、見かけない顔だね。
昔の知り合いーだなんて、ひょっとして私をナンパするつもりだったのー?
おじさん、ロリコンー?」
【吉良吉影!雪女に会う~少年時代 特別編~①】
何となくこれを思ったw