学校近くの廃墟にあった開かない金庫の話
投稿者:ねこじろう (147)
目的の箇所は、その奥辺りにひっそりあった。
今にも崩れそうな洋館風の廃墟だ。
ただかつて見た時とほとんど変わっていないようだ。
まるで童話に出てくるような尖がり屋根をしたレンガ造りの建物で、いったい誰がこんなところに住んでいたんだろう?と当時のクラスメイトたちと話題にして話していたことを、彼は懐かしく思い出す。
当時のクラスメイトたちには、ここで王族のドレスを着た女性の幽霊を見たという者もいた。
森本は赤錆びた金属の門を開くと腰高になった雑草をかき分けながら歩き進み、玄関ドアの前まで歩く。自分の背丈よりも1.5倍はあるような白く重厚な木の扉を開けると中に入った。
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すぐにかび臭い匂いが鼻をつく。
森本の視界には、まるで昔の海外ドラマに出てくるような光景が飛び込んできた。
嘗て訪れた時とほとんどが変わっていなかった。
変わったことといえば、壁にスプレー缶で描かれた意味不明な落書きと床に転がる空き缶やペットボトル。
ホコリに覆われた白い大理石調の床はちょっとしたテニスコートくらいの広さで円形に広がっている。
頭上のかなり高いところには縦長の豪華なシャンデリアがぶら下がっており、室の中央辺りには2階へと誘う優雅な螺旋階段があった。
彼は足元に気を付けながら床を歩き進み白い螺旋階段のところに行き着くと一歩一歩上りだす。
上りきると一階を見下ろせる渡り廊下が伸びていて、そこに沿っていくつかドアがあった。
その日彼が目的としていたのは一番奥の部屋だ。
渡り廊下は木製のようであちこち腐り穴が開いているところが何箇所かあり、そこから一階の大理石調の床が覗いていた。
森本は穴に気を付けながらギシリギシリと歩きながら奥のドアの前まで行き着くと、緊張した面持ちでノブを回す。
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8畳くらいであろうか、
床には地味なペルシャ絨毯が敷き詰められており、入口正面奥には洒落た飾り窓。
左右の壁にある本棚は大人の背丈ほどで小難しいタイトルの本が並んでいた。
そして入口入って右手の壁にはマホガニー製の大きめな西洋机がある。
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