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不思議体験

綿貫 一さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

お告げ
長編 2024/05/09 22:19 9,891view
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その時、足元で、

グシャリ!

って、音がしたの。

見ると、コッコかチキンかカラアゲか、どれかが産んだ卵を、私、気づかないうちに踏んづけちゃったみたいだった。
全部は割れてなくて、ちょうど片側にだけ、ぽっかり穴が開いたみたいになってて。
「あー……」と思ってそれを見てたらね、その中に「いた」んだ。

「いた? 何が? 有精卵的なやつ?」

ヒナコは首を振り、それから震える声でつぶやいた。

「天使、が」

それはね。
割れた卵からモゾモゾ這い出してきたソレは、鶏の雛なんかじゃなくて。
明らかに人の――人間の赤ちゃんの顔と、身体をしていたの。

手のひらに乗るくらい小さな身体が、透明の粘液でヌラヌラ濡れてて。
それが、小屋に射し込む陽の光を受けて、テラテラと輝いてた。

ソレは、確かに小さな人の形をしていたんだけど、背中にはもっとちっちゃな、ボサボサの翼が一組生えていたの。
だから、天使みたいだ、と私は思った。

シワシワの赤ちゃんみたいな顔をして、ヒヨコみたいにキーキーした声で、しばらく泣いていた。

私は、呆然として動けないでいたんだけど、やがてそれは私の方に向けてゆるゆると手を伸ばしたかと思うと、鳴いたの。

「アギラァ――」

って。

しゃべったんだ、って思った。
コイツ――この翼の生えた天使みたいなやつ――私に今、何かを告げたんだって、直感的にわかった。

「――で、その『おしゃべりする天使みたいなやつ』はどうしたの? 
まさか、捕まえて育てて、その年の夏休みの自由研究にでもした?」

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