お告げ
投稿者:綿貫 一 (31)
その時、足元で、
グシャリ!
って、音がしたの。
見ると、コッコかチキンかカラアゲか、どれかが産んだ卵を、私、気づかないうちに踏んづけちゃったみたいだった。
全部は割れてなくて、ちょうど片側にだけ、ぽっかり穴が開いたみたいになってて。
「あー……」と思ってそれを見てたらね、その中に「いた」んだ。
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「いた? 何が? 有精卵的なやつ?」
ヒナコは首を振り、それから震える声でつぶやいた。
「天使、が」
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それはね。
割れた卵からモゾモゾ這い出してきたソレは、鶏の雛なんかじゃなくて。
明らかに人の――人間の赤ちゃんの顔と、身体をしていたの。
手のひらに乗るくらい小さな身体が、透明の粘液でヌラヌラ濡れてて。
それが、小屋に射し込む陽の光を受けて、テラテラと輝いてた。
ソレは、確かに小さな人の形をしていたんだけど、背中にはもっとちっちゃな、ボサボサの翼が一組生えていたの。
だから、天使みたいだ、と私は思った。
シワシワの赤ちゃんみたいな顔をして、ヒヨコみたいにキーキーした声で、しばらく泣いていた。
私は、呆然として動けないでいたんだけど、やがてそれは私の方に向けてゆるゆると手を伸ばしたかと思うと、鳴いたの。
「アギラァ――」
って。
しゃべったんだ、って思った。
コイツ――この翼の生えた天使みたいなやつ――私に今、何かを告げたんだって、直感的にわかった。
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「――で、その『おしゃべりする天使みたいなやつ』はどうしたの?
まさか、捕まえて育てて、その年の夏休みの自由研究にでもした?」
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