インターホン
投稿者:白と黒の旅人 (33)
神社のは本堂というのだろうか。日頃なかにはいれはいような場所に4人並べられ、正座し、「お祓い中は喋らぬように」と言いつけられた。
4人が目を瞑り座る前方から祝詞が聞こえ、ひとまず人間のお祓いは終わった。
心霊スポットで撮った写真は現像し、データからは消して撮った写真全てを清められた日本刀で切り、さらにお焚き上げをすることで供養された。
「霊感ちゃんとOくん(私のこと)には弱い霊が憑いてたよ。でも、あれはものに干渉して悪いことをできるほど強くなかったね。むしろ、君たちが惹き付けてしまったと言えるだろう。」
Oくんに至ってはそもそもお家にいるから他所からきた霊が悪さするには相当強くないとね。なんて、冗談めかして神主さんが私に伝えた後、急に真剣になり「でもKくんとSちゃんは危険かもしれない。同じ生霊が1人と…良くない霊が集まった物が憑いていたよ。2人とも全部祓えたけど、一応気をつけて。」
良くない霊が集まった物は心霊スポットに行けば割と見かける。心霊スポットで撮れた心霊写真に映る不気味な顔、それはひとつの顔ではなく、複数の顔が集まってひとつの顔のように見えているなんてこともある。
気になるのは「同じ生霊」が2人に憑いていることだった。2人が人から恨みを買うような人間ではないことは知っているが、心当たりがないか神主さんと宮司さん、私で話を聞いた。
「夜中、帰り道につけられてる感覚はありましたが、振り返っても誰もいないって事ばかりで……」Sちゃんはこう言い、「家の庭にある物がたまに動いてたりはします」とKくんは言った。
「ふむ…どちらを対象にしているかは分かりませんがストーカーかもしれません。SちゃんかKくんをストーキングの対象とし、もう片方をそれを取り巻く邪魔なものと認識しているのでしょう。霊感ちゃんとOくんの件もその可能性があります。恐らく、犯人の生霊が良くない霊達を集めてしまったのでしょう。」これが3人で話し合った結果だった。
翌日、早速Sちゃん、Kくんはストーカー被害を訴え、霊感ちゃんと私も被害に遭う危険があるとして警察が近所を巡回してくれていた。
変わらずアルバイトに行く際は4人で車に乗り、人目につきやすい昼間にシフトを変えてもらった。都会の人間よりは近所付き合いの密接な田舎の人達は犯人捜索に協力してくれた。
心霊スポットに行って4週間程後、犯人が逮捕された。隣町に住む男で、Sちゃんへのストーキング、Kくん、霊感ちゃん、私への迷惑行為ということで逮捕された。逮捕の決め手はKくんの家のポストに「Sちゃんから離れないと不幸なことが起きる」という旨の脅迫まがいの事が書かれた手紙をポストに投函したことだった。近所のおばさんが「この周辺では知らない人がKくんのポストに何かを入れた」と警察官を引っ張って来た。職質の最中逃げようとした為捕まり、容疑者として確保された。
取調べでは容疑を認め、Sちゃんへのストーカー行為、Kくんへの迷惑行為を認めたが、私と霊感ちゃんへの迷惑行為は認めなかった。
「その2人の家を俺は知らない。その2人はKのやつほど気にならない。」
なんとも勝手な基準の物差しではあったが、警察もその男が私たち2人の家のインターホンを数回に渡って押したのかまでは分からなかった。
その日以降、大きな問題はなく、3人は学校に復帰した。……霊感というものはより強い霊感とひきつけ合うようで、私がこの喫茶店でアルバイトを始めたのも土地とマスターにひきつけられたからだと、神主さんは昔言った。
あの一件以来、SちゃんとKくんはほぼ無い等しいものの、霊感を身につけた。
人間の悪意という物は人間が失った第六感すら蘇られせるらしい。
霊感ちゃんはそのことに怯えつつも、Kくん、Sちゃんと仲良くしている。
ピンポーーン
インターホンが鳴る。外に出る。そこに人はいない。
しばらく私の家は騒がしかったが、私の家に住む「ルームメイト」の方が強かったらしい。1週間としない間にインターホンは
誰の家でも鳴らなくなった。
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