母親の文章、あるいは遺書
『幸せだった今日のうちに、私と娘と息子で、夫の元へ参ります。ご迷惑をおかけします。
1984年2月26日』
日記はこのページで終わりだった
「無理心中…ですか」
皆を代表して千野が訊いた
「うん、そうだよ。……因みに日記にあった『セリザワのおじいさん』は俺の父だ。父は、亡くなった岸島正夫さんと仲が良かったんだよ。彼が亡くなった後は、家賃を下げたり子供たちに勉強を教えたり、随分と世話をやいていたよ。だけどある日 母親のゆう子さんから、再婚を考えている人がいるので、あまり構わないでほしいと言われてね。まぁ、再婚は嘘だったんどけどね。日記には会社を辞めたとあるけど、本当はクビになったんだ。生活能力がないということで、子供たちと引き離されるかもしれないと思ったようだよ。父は事件の後、何で助けられなかったのか、もっと上手く接していたらと、酷く後悔していた」
「そんなことがあったんだ…」
舞が生まれる前の話だ、聞いたこともなかった
「調べてくれて有難う。まだ母親の霊は出るんだね。死んだのに会えてないんだね。40年以上も彷徨っているのか……」
全員が暗い気持ちになった
中でも、武智が一番落ち込んでいるようだ
「大丈夫か?武智」
千野が気を遣った
そういえば、部屋に舞と閉じ込められて以降、彼はほとんど喋っていない
舞は、武智が霊感体質だったことを思い出した
「有難う、大丈夫だよ。…でも幽霊に抱きしめられた時、母親が子供たちを手にかける映像まで見えたんだ。……子供たちが寝静まった後、遺書を書いて、それから……」
そこまで言って、武智は子供のように泣きだした
「……どうやら君の中に、ゆう子さんの一部が入ってしまったようだね。何を見たか話してごらん。話して、吐き出すんだ」
祖父は武智に優しく言った
「話しても良いかな?自分1人で抱え込むのは辛すぎる」
きっとキツイ内容なんだろう
皆は大丈夫だと頷いた
※
武智は岸島ゆう子目線で、それを見たようだ
遺書を書き終わったゆう子は、台所から凶器を持って来た
愛と武は布団でスヤスヤ寝ている























怪談を読んで久し振りに涙が出ました。子どもたちのほうが、ずっと魂レベルが高かったのですね。
ええ子達や?
母親の身勝手さにムカつくこれは愛情じゃなく執着。せっかく優しくしてくれたのにどこまでセリザワさんに迷惑かけ倒すねん!と、残念ながら舞さんのように優しい気持ちにはなれんかった。