いちにち、いちみり
投稿者:太山みせる (35)
その日、野村は某観光地に来ていた
妻がそこの有名な祭りを見たいというので、有給を取り、小学生の娘2人を連れて家族4人でやって来たのだ
夏の夜、大きな神輿を担いだ男たちの喧騒は迫力満点で、直に見なければ味わえない感動がある
夜の神輿ということで派手にライトアップされ、その華やかな姿に妻や娘たちは「凄い!」とはしゃぐ
妻子が祭りに見惚れる中、野村は家族がはぐれないか怪我をしないか、そのことばかり気にしていた
強面といわれる野村が、2メートル近いゴツい体を縮めて家族を守っている、そのギャップは見る者を微笑ましくさせた
お陰で妻子ほどは楽しめなかったが、3人が喜んでいるので彼は満足だった
祭りが終わり宿泊先のホテルへ向かっていると、ふいに肩を叩かれた
「え?」
振り返った先に、野村ほどではないが、これまた大きくて強面の男がいた
「……吉見!」
中学校の同級生だ
まさか遊びに行った観光地で会うとは!
「久し振りだな野村、唐突に申し訳ないが、積もる話もあるし、ちょっと話せないか?」
笑顔ではあったが、吉見は何だかやつれていた
野村こそ、吉見に聞きたいことがたくさんあった
※※※
妻子をホテルに送ってから戻ると、吉見は嬉しそうに手を振って迎えてくれた
「お前も祭りを見に来たのか?」
尋ねる野村に、
「違う、俺はこの付近に住んでいるんだ。通りかかっただけだ」
と吉見は意外なことを言った
「こんな所まで引っ越したのか?」
ここは地元からかなり遠い
(遠くに来たのは、やはりあの件と関係があるのか?)
「なぁ吉見、お前まだ色坂と…」
「後でな!」
野村の話を、吉見は短く鋭く遮った
「安全な店がある、そこの個室で話そう。絶対に迷惑は掛けないから信用してくれ」
安全な店って…と思いながらも野村は吉見について行った
ひきこまれた。
引き込まれました。
10ページもあったかと思うほどあっという間に読んでしまいました!怖かったです!
面白かった。展開がハラハラする。
すごかった。
投票はしましたが怖かったより面白かった、「せめて1m〜」のくだりで不覚にも笑っちゃいました。
吉見さんに幸あれ!