というのは、そこが候補の中では最も厄介な物件だからだ。
彼は少し遠慮がちにRinRinさんの顔を見ながら
「これですか、、、こちら確かに良い物件なのですが、先ほども申しました通りこちらはいわゆる霊的なものではなくて、、」と言ったが、
「分かってるわよ!でもアタシがこれで良いと言ってるんだから良いに決まってるじゃないの」ともう決めた風だ。
結局安河内はRinRinさんをすぐに対象の物件に連れて行き見てもらうことにした。
どんなに事務所で気に入ったと言ってても実際に現地に行くと、後から断ってくる客も多いからだ。
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物件は安河内の事務所から車で10分のところにあった。
そこはJRローカル線の駅から歩いて5分の新興住宅街の中にある二階建ての家だ。
「こちらは築まだ3年で、ご覧の通りほぼ新築に近い建物となっております」
そう言って安河内は金属の門を開くと手入れの行き届いたアプローチを歩き進むと、玄関前に立つ。
玄関扉の横には「平田」という表札。
「まあ素敵じゃない!本当にこれが一月5万円なの?」
背後に立つRinRinさんが驚いたような声を出した。
安河内は苦笑いを浮かべながら合い鍵をポケットから出すと白い玄関扉の鍵穴に入れ、カチャリと開錠する。
そしてゆっくりと開いていった。
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玄関口の端には男物の革靴が一つあった。
右手には備え付けの白い下駄箱があり正面にはフローリングの廊下が奥までのびている。
廊下沿いにはいくつか向かい合ってドアがあった。
どうやら室内も新築のようだ。
生きている人間が怖い。
おっしゃる通りですね
─ねこじろう