欺瞞に満ちた家族
投稿者:とくのしん (65)
なんだかもう会えなくなるような・・・そんな不安を感じていた。
1限目が終わり2時限目も終わり・・・時間が経てば経つほど不安が募る。
私は居ても立っても居られず、3時限目の講義途中に家に戻ることにした。
自転車を飛ばし家に戻る。マンションのエントランスを通り、エレベーターに飛び乗る。
1階・・・2階・・・3階・・・ゆっくりと上がっていくエレベーターに苛立ちを感じながら、ただ待つしかなかった。自宅がある5階へと着く。エレベーターのドアが開くと同時に私は駆け出していた。玄関前まで走り、私はドアノブに鍵を差し込む。ガチャリと開錠を知らせる音を聞いたと同時にドアノブを回し玄関に入った。
「お母さん!」
大声で母を呼ぶが返答はない。玄関からかすかにカレーの匂いがした。
リビングに行くが母の姿はない。キッチンに目をやると、コンロに赤い鍋があった。カレーの匂いが部屋に充満している。母のお気に入りの赤い鍋を開けると、そこにはできて間もないカレー。鍋はまだほんのりと熱かった。
今朝感じた“もう会えないかもしれない”という不安が一段と大きくなる。
もし、買い物に行っただけなら駅前のスーパーにいるはずと、私は部屋を飛び出した。自転車に乗って駅前に向かう。店内を隈なく探すが母の姿はない。
探せば探す程不安が大きくなっていく。必死になればなるほど不安が現実味を帯びてくるように感じた。
携帯でお母さんに電話するがコール音がなるだけで出る気配はない。
コール音に混じって刑事さんの言葉がフラッシュバックのように思い出される。
“本当の家族じゃない”
そんな言葉に押しつぶされそうになるが、今はただ声を聞きたかった。一言でいい、お母さんの声を聞きたかった。
しかし、無常にも母が電話になることはなかった。
自宅に戻った頃、ベランダから綺麗な夕焼けが見えた。
オレンジ色に染まった綺麗な夕陽をしばらく眺めたあと、リビングをゆっくりと見渡す。私一人だとこんなに広く感じるんだ、と無性に切なくなった。でも何故か涙は出なかった。部屋に残るカレーの匂いを嗅いだら、なんだかお腹がすいてきた。
「こんなときでもお腹がすくのね」
私は鍋のカレーを温める。立ち込こめるカレーの匂いに一層食欲がそそられる。
程よく温めて、私は一人テーブルに着いた。
「いただきます」
手を合わせてカレーを頬張る。母が作るいつものカレーだ。
辛口のカレーを口に運んでいると、急に涙が溢れた。これが最後となる母の味に涙が止まらなかった。もう二度と味わうことができなくなるこの味を噛みしめながら、お母さんもお父さんもお姉ちゃんもおじいちゃんも・・・誰一人としてこの家には戻ってこないことを理解していた。
そして一人の食事がこんなにも味気ないものだと、私はその日初めて知った。
「あなたのご家族・・・と申していいんでしょうかね。あの方たちの行方は今もさっぱりわかっておりません。自宅の放火の件、そして4人の遺体について何らかの事情を知っていることは間違いないでしょうから、警察では全力で捜索しております!」
警察のお偉いさんだろうか、年配の男性が私にそう力強く語っている。
「それで・・・あのあと連絡は?」
背乗りだったんだろうか
チートしてんねぇ。
たくさんの投票ありがとうございました。
動画にしてくれた方や、朗読していただいた方々に感謝です。
とくのしん
怖くはない面白い作品でした
なんか主人公がメッチャかわいそう。これは永遠に救われないな。。。
まぁ背乗りでいいんかね。
朝鮮スパイが日本人家族(学会の信者とか?)に「金出すから引っ越しすべき」とアドバイス。引越当日に父母姉を殺害。妹は物心ついてないからそのまま引取。遺体は引っ越し先の床下埋めた。
上から「処理したい死体があと2体あるからついでに埋めて」と指示あり。
こんな所?
これ「にぎやかな食卓」だよなぁと思いながら読んでたらまさかの名前が出てきたっていう