盆の舟
投稿者:青空里歩 (2)
長編
2024/03/17
00:20
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昨年8月下旬から、私達は一家三人、私の実家でと私の両親と一緒に暮らすことになりました。
元の仕事を何とか見つけ、夫も地元の企業に再就職が決まり、田舎暮らしも板についてきた頃。
そう、盆の舟を見た13日盆の入りから数えること1年。深夜2時過ぎ、夫の携帯に、義弟から着信がありました。
盆の入りの昨夜、舅と姑が ふたり揃って海で亡くなったとの知らせでした。
このような事情があったとはいえ、両親の死に目にも、葬儀にも出席できない夫が不憫でなりません。
私は、ごめんなさいと涙を流しながら、何度も何度も謝りました。
夫は、静かに首を横に振り、誰に聞かせるともなく語り始めました。
―ふたりは、今頃、「盆の船」に乗っているよ。
―まぁ、ひとり足りないけど。
―それは、仕方ないさ。
ー俺は、どうなっても構わない。
ーあいつらには、負けない。
ーたとえ、どうなろうとも、必ず…
(聞こえないわ)
夫は、微笑むと静かに瞼を閉じ、全てを悟りきったかのように合掌しました。
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まさか、ご主人(‘_’?)
なかなか読み応えがあって面白かったです。
長編で面白い作品に怖い話の醍醐味を感じました。
これからも頑張ってください。
(゜レ゜)。
レーサーが宝船を見てはいけないという話があったと思う(゜レ゜)。
東北こういう話多いね(;_;)。
( ゚д゚)。
お読みいただき、コメントを下さった3名様、ありがとうございます。作者の青空里歩です。
順を追って、返信いたします。
・確かに、衝撃的なラストです。ご主人の後悔たるや並大抵のものではないでしょうね。
・初回投稿作『優良物件の裏側』をお読みくださった方でしょうか。もったいないほどの励ましの言葉ありがとうございました。これからも、ご期待に添えるよう頑張ります。基本、長編が多くなりますが、短編、中編にもチャレンジしていきたいです。どうぞよろしくお願いします。
・レーサーが宝船を見てはいけない。そんなジンクスがあったなんて初耳です。グーグルで検索してみたのですが、深夜番組で放送されたそうですね。実際に、現役カーレーサーで、見た人がいらっしゃるのでしょうか。
東北は、別名「みちのく」ともいわれています。(漢字では、「未知の奥」と書くらしいですから)怖くて不思議な伝承怪談の宝庫。まだまだ、未知の怪談がたくさんありそうですよ。
文章も上手く、構成もしっかりしている傑作。
美しくも妖しい屋形船の姿が目に浮かんでくるようです。