盆の舟
投稿者:青空里歩 (2)
私は、これ以上ないというくらいアクセルを吹かし、その場を走り去りました。どこをどう走ったのか覚えていません。
途中、コンビニのロー○ンを見つけ、駐車場から夫に電話し、迎えに来てもらいました。
夫の実家にたどり着いた時は、深夜1時を回っておりました。玄関先では、舅と姑が心配そうに気をもみながら私達の到着を待っていました。
「どうしたの。携帯は通じないし。何かあったんじゃないかって心配したよ。」
憮然とする夫の家族を前に、私は、息子を布団に寝かせ、無事家についた安堵感から、声を上げて泣き出しました。
取り乱した私を見て、
「まぁ、今晩は、長旅ご苦労様でした。これを飲んで、早く休みなさい。明日、一緒にお墓参りに行きましょう。」
姑は、優しく私の肩を叩き、立派な神棚の有る客間に案内してくれました。
そこには、フカフカの布団が敷かれ、私は、着替えを済ませました。
「一体何が会ったの。運転に慣れている君が、道に迷うはずがない。あの場所は、昔から良くない場所と言われていてね。そりゃ、ここには一番の近道だけど。地元でも関係者以外は、めったに人が入らない場所なんだよ。」
夫は、事件性を疑ってるようでした。
私は、黙っていようと思いましたが、意を決して一連の出来事を順を追って話すことにしました。
例の屋形船の話をしたとたん、
夫は、顔面蒼白になり、、
「父さん、母さん、起きてくれ。ゆかりちゃんが、ゆかりちゃんが、盆の船に魅入られた。」
と大声で叫びました。
「なんだって。」
「なんてこった。よりによって・・・。」
仏間と居間から舅と姑の発する悲鳴にも似た怒声が聞こえてきました。
「今日は、盆だぞ。それも迎え盆だぞ。盆の入りだ。」
「そもそも、どこをどう走れば、□■海岸に出るんだ。」
「すみません。道がわからなかったものですから。ナビの通りに…走ったんです。そしたら、いつの間にか、海岸沿いを走っていて。」
「わからないって、どういうこと?」
姑は、真っ青になって、唇をワナワナと震わせ、詰問してきました。
舅は、姑を宥めながら、
「一番辛いのは、ゆかりさんだ。問題は、そこじゃない。」
ゆっくり穏やかに聞きました。
「ゆかりさんが見た黒い人影は、何人だった?」
「3人以上はいたと思います。正確には分かりません。でも、大人数ではありませんでした。はっきりと見えませんでしたが、5人程度かと。」
まさか、ご主人(‘_’?)
なかなか読み応えがあって面白かったです。
長編で面白い作品に怖い話の醍醐味を感じました。
これからも頑張ってください。
(゜レ゜)。
レーサーが宝船を見てはいけないという話があったと思う(゜レ゜)。
東北こういう話多いね(;_;)。
( ゚д゚)。
お読みいただき、コメントを下さった3名様、ありがとうございます。作者の青空里歩です。
順を追って、返信いたします。
・確かに、衝撃的なラストです。ご主人の後悔たるや並大抵のものではないでしょうね。
・初回投稿作『優良物件の裏側』をお読みくださった方でしょうか。もったいないほどの励ましの言葉ありがとうございました。これからも、ご期待に添えるよう頑張ります。基本、長編が多くなりますが、短編、中編にもチャレンジしていきたいです。どうぞよろしくお願いします。
・レーサーが宝船を見てはいけない。そんなジンクスがあったなんて初耳です。グーグルで検索してみたのですが、深夜番組で放送されたそうですね。実際に、現役カーレーサーで、見た人がいらっしゃるのでしょうか。
東北は、別名「みちのく」ともいわれています。(漢字では、「未知の奥」と書くらしいですから)怖くて不思議な伝承怪談の宝庫。まだまだ、未知の怪談がたくさんありそうですよ。
文章も上手く、構成もしっかりしている傑作。
美しくも妖しい屋形船の姿が目に浮かんでくるようです。