優良物件の裏側
投稿者:青空里歩 (2)
うわぁ。
信じられない事態に、混乱した中田さんは、その場に転倒し、フロアに腰をしたたかに打ち付けてしまった。
身体中に激痛が走り、うつ伏せになったまま、とうとうその場から動けなくなってしまった。
ほんの十数分が、まるで数時間にも感じるほどの痛みに耐えながら、中田さんは、おそるおそる顔を上げ、件の壁を見やった。
え?
なんと、壁は、張り替えたばかりの真新しいアイボリーの壁紙に変わっているではないか。
赤黒く変色した壁はおろか、壁から、身を乗り出し、今にも実体化し、中田さんに遭遇しようとしていた男の姿も嘘のように消失していた。
混乱する中田さんの耳に、
う“ゔゔゔゔゔゔ
戸田さんと思しき声が溢れ聞こえてきた。
(そうだ。戸田さんを助けなければ。なにをやっているんだ。しっかりしろ俺。)
眼の前の状況を把握し、気持ちを落ち着かせるのに数分を要した中田さんは、ポケットから携帯を取り出し、救急車と警察に電話をかけた。
「とにかく、早く。早く。来てくれ。YハイツB棟3号室 駅から5分。」
と何度も何度も繰り返し叫び続けた。
「戸田さん、今、警察と救急車呼びましたから。がんばってください。」
警察と救急車を待つ間、戸田さんを励まそうと、激痛に耐え、四つん這いになりながら、やっとの思いで戸田さんの元にたどり着いた中田さんは、項垂れ微動だにしない男を見て愕然とする。
(ちがう。この人は、戸田さんじゃない。)
なんと!そこにいたのは、オーナーの斎藤さんだった。
「さ、斎藤さん。こ、これはいったいどういうことですか。戸田さんは、戸田さんは、どこですか。」
斎藤さんは、首が折れたままで、絞り出すように、
「・・・ち、か、し、つ・・・」
と、呟いた。
「戸田さんは、地下室にいるんですか。どこなんです。地下室。」
斎藤さんは、操り人形のように、くたくたに萎えた右手でキッチンとソファの中間あたりを指さした。
あそこまでなら這って行けるかもしれないと判断した中田さんは、痛む腰を庇いつつ、匍匐前進(ほふくぜんしん)を繰り返しながら、「地下室」と思しき場所を探し始めた。
10分ほど漂い続けただろうか。
ふと、右手の人指し指が、刳り取られたフロアの縁にかかるのを感じた。
指先にかかる湿り気を帯びた冷気に、中田さんは、そこが地下室であることをを確信した。
両腕を伸ばし、フロアの縁に手をかけると、ありったけの力を振り絞り、ぐいと身体を引き寄ることに成功した。
上半身をせり出し、中を覗き込んで見た先には、1.5メートル四方に刳り取られた枠の中に、円形の「穴」がポッカリと口を空けていた。
そこでは、消失したはずの銀バエの群れが、
ぶぶ~ん
羽音をさせながら、穴から出たり、入ったりしているのが見えた。
文章うまい!これからの作品にも期待!!
不気味です((( ;゚Д゚)))
ありがとうございます。ご期待に添えるよう頑張ります。よろしくお願いします。
面白かった!
投稿してから日も浅いのに、率直な感想を頂戴し、とても嬉しいです。
何人かの方がYouTubeで朗読してくださいました。皆様が、新作を心待ちにしてくださるようなクオリティの高い作品を目指して頑張ります。
面白かったでしょうか。率直な感想ありがとうございました。