優良物件の裏側
投稿者:青空里歩 (2)
どうやら、銀ハエと異常な臭気は、この穴が発生源のようである。
腰の激痛に堪えながら、更に身を乗り出し、穴の中を覗き込んだ中田さんは、驚愕した。
それは、地下室などではなかった。
過去、これとおなじものを見たことがある。
そう、あの古い豆電球がぶら下がる祖父の家にあった。
祖母は、訪れるたび、「ここの水はおいしいよ。」と自慢げに話していた場所。
そこは、まさしく
井戸
汚泥の詰まった涸れた井戸だった。
深さ5メートルほどもあろうか。
井戸 とわかった途端、中田さんは、絶句した。
この道10年以上のベテランだが、この地域に、かつて井戸があったことなど聞いたこともない。
都の条例によると、過去井戸として使用され、そのままの状態で、現存している場合は、その旨届け出なければならないことになっていた。
その上に、建物を建てるなどもっての外である。
中田さんは、余りのショックと、度重なる不可解な現象にもはや、精神が崩壊しそうになっていた。
ぽとん ぴたん
ぽとん ぴたん
ぽとん ぴたん
涸れたはずの井戸の中から雫(しずく)が垂れる音が聞こえてきた。
(まさか)
中田さんは、身を乗り出し、更に井戸の中を覗き込んだ。
昼下がりの陽光に微かに照らされた井戸の底に、ついさっきまで、バスルームの壁にへばりついていたシルクハットを目深に被りうつむく男がいた。
男は、こちらに背を向け、直立不動で佇んでいる。
もはやシミや影ではない。三次元の存在と化した男に、中田さんは、思わず大声をあげてしまった。
中田さんが発した叫び声に呼応うるるかのように、男は、左手でシルクハットの端を掴むと、少しずつ少しずつ身体を動かし始めた。
ずる びちょ ずるっ びちょ ずる びちょ
汚泥を擦る重々しい音が 深い井戸の底から響く。
男の身体が、中田さんに向きかけた時、バンというけたたましい音とともに、昼白色の眩(まばゆ)い光が差し込み、騒音とともに、ドヤドヤと数人がこちらに向かって来るの足音が聴こえてきた。
中田さんの肩にポンと手が置かれた。
「警察です。」
ふと我に返る。
文章うまい!これからの作品にも期待!!
不気味です((( ;゚Д゚)))
ありがとうございます。ご期待に添えるよう頑張ります。よろしくお願いします。
面白かった!
投稿してから日も浅いのに、率直な感想を頂戴し、とても嬉しいです。
何人かの方がYouTubeで朗読してくださいました。皆様が、新作を心待ちにしてくださるようなクオリティの高い作品を目指して頑張ります。
面白かったでしょうか。率直な感想ありがとうございました。