そう決意し旅館の外に出て自分のバイクに跨る。
キーを刺し、セルを回す。
キュルキュルキュル・・・
いつもなら一発でかかるはずのエンジンがかからない。セルを回す音だけが空しく鳴り続ける。
「どうしたんだよ・・・!こんなときに!」
セルでの始動を諦め、キックでエンジンをかけようとするが、こちらもかからない。
「かかってくれ・・・!」
木村の願い虚しく、バイクのエンジンはかからなかった。バイクに跨ったまま項垂れていると、一台のタクシーがゆっくりと近づいてきた。
こんな時間に誰か呼んだのだろうか?怪訝そうにタクシーを眺めていると、木村のすぐ手前でタクシーは停まった。しばらくタクシーと睨めっこをしていた木村は、バイクから降りてタクシーに近づく。後部座席のドアが開いた。
「・・・お乗りになりますか?」
運転手が声をかけてきた。自分が呼んだわけでもないタクシーに乗っていいものかどうか迷ったが、意を決して乗り込んだ。
「〇〇炭鉱町跡近くまで」
「かしこまいりました」
後部座席のドアが閉まり、タクシーは走り出した。
真っ暗な山道を慣れた感じで運転手はタクシーを走らせる。運転手も木村も無言のまま10分が過ぎた頃だった。
「〇〇炭鉱町跡に何のようで?」
運転手がまっすぐ前を見据えたまま、木村に声をかけた。
「友人がそこに向かったみたいで」
「こんな時間にですか?」
「恐らく・・・」
運転手はしばし押し黙ったあと、再び口を開いた。
「・・・あそこにお客さん行ったんでしょ?」
「・・・どうしてそれを?」
「どうでした?」
「どうって・・・」
「あそこはね、安易に近づいちゃいけない場所なんですよ」
「というと?」

























他の投稿者には悪いですけど別格ですね。
安定感があって毎回ハズレがない。
心霊スポット系の怪談の中でも、ダントツに怖く、切なく、考えさせられる内容でした。この方の作品は、安定していてハズレがないですね。ノスタルジックな情景描写も、かつての繁栄を知るもののひとりとして、胸迫るものがありました。
凄い。
これを元にショートムービー作って欲しいレベル
木村さんを伝聞調になった辺りから、何となく展開が読めましたが、物悲しく切ない感じがよかったです。炭鉱の町というところがいいですね。長崎出身の私、軍艦島は小さい頃生きました。
これは凄い。数ある投稿の中で群を抜いている。情景が目に浮かぶ。自分も物語の中に一緒にいるような、とても不思議な感じ。とにかく素晴らしい。ありがとうございました。
もうーーー、作品としての出来が素晴らしいです タクシーが現れた時点で痺れた そしてタクシー運転手のセリフがもう 予想通りながらまたまたしびれます! そのセリフの中身がホテルキャルフォルニア
たくさんのコメントと投票ありがとうございました。
準大賞受賞することができて嬉しい限りです。
お気に入りのYouTubeチャンネルで動画にしていただいて、何度も聞き返してしまいました(笑)
動画にしてくれた編集者の方にも感謝です!
鳥肌がたった
何よりもすごかった。表現が天才
大傑作
最高に面白かったです。怖さと気味の悪さと、寂しさが絶妙なバランスでした!大好きな作品になりました!
切ない
行方不明が多い〇〇炭鉱って北海道の「雄別炭鉱」かな?
これは映画化してほしいレベルで良作。怖さの中にも切なさがあって人の心奥底にあるノスタルジックな部分を呼び起こさせる。
怖いながらも情感もあって、読みごたえがすごい。
もはや文学の域だと思う。
すごく面白かった。なんだろう、学校の怖い話?だったかな、30年以上前に似た話の漫画を観た気がする。
廃校に肝試しに行った仲間1人が行方不明になって、廃校の壁にかかった過去の写真に写っているという話だった気がするな、、