【あの頃の怪談②】写真
投稿者:綿貫 一 (31)
「あなた、昔、オカルト的なものが好きだったわよね?」
今も大好きだ、と告げると、彼女は少し迷ったような顔をした後、その封を開けた。
中からは、写真の束が出てきた。
「先日、実家の建て替えがあって、荷物を整理していたの。
そうしたら、小学校時代の写真が出てきて。
たぶん、現像したまま、中身を見ないで引き出しにしまっちゃってたみたいなの。
ちょうど同窓会もあるから、話のネタになるかと思って、中身を確かめてみたんだけど――」
それは、小学4年の夏休みの写真だったそうだ。
友人たちと、近所の神社の夏祭りに行った時、使い捨てカメラで撮影したものらしい。
懐かしい風合いのアナログ写真を順に見ていくと、浴衣姿の初恋の少女が、満面の笑みをカメラに向けていた。
きっと、少年時代の私なら、家宝にしていただろう。
「これが――?」
彼女のかすかに緊張した表情が気になって、写真にめくりながら尋ねると、
「――それ」
と、不意に彼女がつぶやいた。
それは、夏祭りの神社から一転、屋内で撮影された写真であった。
二十歳くらいの若い男が、気だるげな表情で、窓辺で煙草をふかしている。
「それ、大学の頃に同棲してたカレシ」
ふうん、と気のない返事をしたが、内心「見たくないものを見てしまった」と私は毒づいた。
それから一瞬後に、違和感に気がつく。
「小学校の頃の使い捨てカメラ、大人になるまで現像しなかったの?」
フィルムを使い切らなかったカメラがたまたま出てきたから、それでカレシの写真を撮った、ということだろうか。
ずいぶん物持ちがいいものだ。
「そんなことしてないよ。
それに、次からまた夏祭りの写真に戻ってるでしょ?」
彼女の言う通り、写真の中は、再び小学校時代に戻っている。
「大学の頃の写真が、昔の写真の束に混じってたってことじゃ――」
当然考えられる可能性を口にするも、彼女は首を振る。
「そもそもそんな写真、撮った覚えがないの。同棲してた期間も短かったし。
それにね、写真の隅に写ってる日付が、」
続きだ!!
綿貫です。
それでは、こんな噺を。
う~む、分かりやすいのに良くわからない話であり、怖そうなのに怖いのかわからない。
でも意味不明な話でもない。
まさに不思議怖い話だ。