理科室の人体模型 vs チーム悪ガキ
投稿者:kana (216)
やがて人形はやぐらの上から落ちた。その衝撃で絡まった足がもげた。
だが、両手でむくっと上半身だけ起こし、こっちを睨んでいる。
「おまえだけは逃がさん・・・」そう言って燃えながら上半身だけで追いかけて来た。
「うわぁぁぁ!」みんな散り散りバラバラに逃げる。が、やつはボクを目標にしたようだ。
カシャンカシャンと音をたてながら、すごいスピードで追ってくる。
ボクは河川敷の中を必死で逃げた。
燃えながら迫ってくる奴の通った後は、乾燥した草に火が移って燃え出していた。
だんだん人形のスピードが落ちて来た。
溶けたベトベトの樹脂が草と絡まり、くっついて身動きが取れなくなってきたのだ。
人形は河川敷の真ん中でどんどん燃えて黒いススを出していた。
そのススが、恐ろしい顔のように一瞬見えた・・・人形はもう動かない。
どうやらボクらは人形に勝ったようだった。
だが、一度ついた火はなかなか消えない。河川敷の草がどんどん燃え広がる。
ガリ「オーイ、早く逃げろー!!」
ぐっち「俺たち先に逃げるからなーー!!」
友達の叫び声が聞こえる。くっそ、今度はボクが見捨てられた。
もしかして、ボクはこのまま火に巻かれて死ぬのだろうか・・・煙で周りが見えない。
と、その時、誰かの声がした。
「・・・こ、こ、こっちに逃げれば助かるぞ・・・」
それはおっさんの声だった。・・・ボクは声のする方に走った。
・・・なんとか火のないところまで走り抜けることができた。
「助かったよおっさん、ありがとう。・・・あと、ゴメンな、助けてやれなくて・・・」
ボクは泣きながらおっさんに謝った。
誰かが通報したのか、河川敷には消防車がたくさん集まって来て、消火活動が始まった。
ボクらは逃げた。・・・結局この火事は、ホームレスの人たちがしていた焚き火の火が燃え広がったものだと判断されたようで、オジサンたちは別の場所に連れていかれてしまった。
だが、誰もボクらのことやあの人形の事を言う人はいなかった。
学校にはまた警察がやって来ていた。理科室から人体模型が盗まれたので盗難被害を出したそうだ。あの人形、50万円位するのに・・・と先生が嘆いているのが聞こえた。
これらの事件は、「学校内ホームレス殺人事件」「河川敷火災事故」と、それぞれ別事件として新聞に載った。「人体模型盗難事件」は新聞のネタにはならなかったようだ。
「・・・・知らんぷりしとこっと」
あと、いつの間にか学校にはもうひとつ怪談が増えていた。
ときどき、何もないのにものすごく臭い場所があって、きっとホームレスの幽霊がいるのだろうという話になった。
なかなか良作
面白かった
思い切った、振り切った作品だね
怪談ながらも、少年たちによる見捨てた友のための怪物への復讐劇、少年たちが知恵を絞り怪物を倒す冒険劇、である。
少年漫画的な爽快感がある。
面白かったです!見事に騙されました。おっさんいい人だったなぁ。
学校の七不思議を解決(破壊?)していく冒険活劇も期待できますね!
どこへ行こうと言うのかねがムスカで草