【M】心理クリニック
投稿者:ねこじろう (147)
月曜朝10時。
繁華街の外れにある「【M】心理クリニック」。
依存症、うつ病、強迫性障害、統合失調症などなど、
様々な心の病に悩む人たちの駆け込み寺だ。
5階建て雑居ビルの5階の奥まったところにある。
6帖ほどの埃っぽい診察室のデスク前にはM医師、その正面には朝一番に訪れた初診の患者が座っていた。
医師の背後には派手な化粧をした看護師が立っている。
医師の年齢は50を過ぎたくらいだろうか。
白髪混じりの髪は伸ばし放題で無精髭を生やし目には勢いがなく、見るからにだらしない印象だ。
白衣を羽織ってなければどうみても医師には見えず、場末の立呑屋でくだを巻く連中と同類な感じだ。
ただこの医師、そのだらしない外見に似合わず、歯に衣着せぬもの言いで患者たちからは絶大な信頼を得ていた。
医師の前に座る末崎という中年の男は白のシャツにグレイのジャケットを羽織っていて、髪を七三に分けた色白の真面目そうな感じだ。
「ということは、あんたは自分によく似た者にいずれ殺されるんじゃないかと言ってるの?」
とM医師は呆れた様子で尋ねた。
末崎は怯えた表情で頷くと口を開く。
「先生、俺の言うことまだ信じて無いでしょう?
じゃあこれ見てくださいよ」
末崎は上着のポケットからスマートホンを出すと、素早く指先で画面を操作して画像を表示させ、医師に手渡す。
M医師はそれを受け取り、画面に顔を近づけると凝視した。
スナップ写真のようだ。
どこかの遊園地だろうか。
様々な人が行き来する路上で、メリーゴーランドを背景に末崎本人が笑顔で立っている。
「この写真は?」
スマホから目を外してM医師が尋ねる。
「3日ほど前の休みの日に、彼女と市内にある遊園地に遊びに行った時のものです」
「この写真が何か?」
M医師がまた尋ねると、末崎が真剣な表情で
「画面の右端をよく見てくださいよ」と言うので、医師は言われるままに視線を移動した。
画面右端に男が立っている。
黒っぽい服で髪こそ少し長めだが、その横顔は中央に映る末崎と似ていると言えば似ているという感じだ。
というのは、その男のところだけ少し画像が荒れているからだ。
気味が悪いですね、怖かったです((( ;゚Д゚)))